伊方再稼働賛否を問う
安倍晋三政権は、川内(せんだい)原発(鹿児島県薩摩川内市)に続き、四国電力伊方原発(愛媛県伊方町)の再稼働を狙っています。伊方町に隣接する八幡浜(や
わたはま)市。12月7日に市民団体が再稼働の賛否を問う住民投票条例の制定を求める直接請求署名を提出した同市を訪ねました。
(内田達朗)
同市は市内全域が原発から30キロ圏に入り、市役所は、原発から約11キロの地点にあります。有権者1万1175入(36・3%)の署名を提出したのは、「住民投票を実現する八幡浜市民の会」です。
共同代表の一人、石崎久次市議(無所属)は「安倍首相は『事故が起きたら責任を持って対応する』といいますが、福島の現状を見るとそうは思えません。″事故が起きたら福島のように扱われるのではないか″との不安の声が市民の間に広がっている」といいます。
伊方原発は、日本有数の活断層「中央構造編」がすぐ近くを通り、原発の南にはマグニチュード9クラスの巨大地震が想定される南海地震の震源域が迫っています。原子力規制委員会は、重大事故の危険性を認めながら、避難の問題を審査から除外。規制基準に「適合」としました。安倍政権は規制委の判断を根拠に、再稼働に突き進んでいます。
議会軽視、市民無視
同市の大城一郎市長は9月,2日、中村時広知事を訪ね、伊方町長(10月22日)や県知事(10月26日)よりも早く再稼働に同意を表明しました。市民や議会から「議会軽視だ」「私たちの意見を聞かずに決めるのは許せない」の声があがりました。
市長は表明の前日に開かれた市議会の協議会で、知事に「回答書」を提出するとし、同意するか否かを明らかにしませんでした。
日本共産党の遠藤素子議員は「議会軽視であり、撤回すべきだ」と追及。市長は「6月議会で(再稼働反対などの)請願が不採択になった。その議決を無視するほうが議会軽視だ」と開き直りました。
市長は、同意の理由として、8月に市が開いた説明会の参加者アンケートで6割が賛成したこともあげています。
石崎氏は「説明会は原子力規制庁と四国電力が一方的に説明するものでした。参加したのは、市議と市が選んだ団体の役員だけ。市民は傍聴だけで、質問すらできませんでした」と批判します。
市長の″暴走″に対し、声民と党派を超えた市議の共同が広がりました。石崎氏とともに「市民の会」共同代表を務める遠藤綾さんは「市長だけではなく、きちんと市民の意見を示そうという呼びかけに賛同が広がった」と語ります。
市民守る一点共闘
日本共産党の遠藤市議に加え、無所属の石崎市議、岩淵治樹市議が一般質問で追及。議会報告を共同で発行し、論戦の内容や市長の同意表明の不当性などを明らかにしました。
共同は議会外にも広がりました。市議と市民有志が10月28日に「市民の会」を結成。市長に対して条例制定を要求する「請求代表者」(10人)には、遠藤、石崎、岩淵の各市議と前議長の現職市議4人、議長経験者の元市議2人も加わりました。
石崎市議は「″おまえはいつから共産党に入ったのか″と言う人もいました。でも、私は市民の幸せを守る一点で力を合わせたのです」といいます。
定時定点、宣伝行動
「市民の会」11月3日から12月2日まで、戸別訪問とあわせ、市内のショッピングセンター前など定時・定点での宣伝行動に取り組みました。「市民の命と財産 子どもたちの未来 だいじなことはみんなで決めよう!」と署名への協力を呼びかけるビラを新聞折り込みで配布しました。
署名に応じた市民からは「市長のやり方は許せない」「(市長は)私たちの声を聞
いてくれない」などの声が寄せられました。伊方町との境にある地域では、署名を集める受任者に高齢の女性が「やっと来てくれた。署名したかったのよ」といって署名しました。
「市民の会」の遠藤共同代表は、署名を提出した7日の記者会見で呼びかけました。
「市長だけで決めるのではなく、きちんと市民の意見を示そうと取り組みました。有権者の3分の1を超える市民が署名しました。この重みを市長・市議会は受け止め、住民投票条例を実現してほしい」
(「しんぶん赤旗」2015年12月11日より転載)