石破茂自公政権が第7次エネルギー基本計画に盛り込んだ「次世代革新炉の開発・設置」が具体的に動きだしました。関西電力が福井・美浜原発での新規建設のため地質調査を始めることを明らかにし、九州電力も新規建設を検討するとしています。
日本社会に深刻な被害をもたらした東京電力福島第1原発事故を忘れたかのような原発回帰です。
原発事故で放出された大量の放射性物質は広範な地域を汚染し、多くの住民が長期の避難を強いられました。いまなお300平方キロメートル以上が帰還困難区域とされ、約5万人が故郷に戻れずにいます。農林水産業をはじめ地域産業も地域の伝統文化も深刻な被害を受けています。
多くの福島県民が苦しんでいる現実を直視すれば、原発の新規建設など許されるものではありません。
■建設費回収を保証
原発の新規建設などをすすめるため、政府は「長期脱炭素電源オークション」を導入しました。1基1兆円とも言われる巨額の原発建設費を確実に回収できるようにする制度です。オークションで落札された原発の建設費、改修費、運転維持費などに相当する収入を電力会社に保証します。その原資は電気代に上乗せされ、すべての消費者から徴収されます。
すでに、中国電力島根原発3号機、東京電力柏崎刈羽原発6号機、日本原電東海第2原発が落札されています。さらに次回オークションからは、建設費が増えても、落札時点の1・5倍までは認めるとしています。投資リスクは消費者に押し付けられます。
これほど手厚い措置を取らなければすすめられないほど、原発建設は超高リスクな事業ということです。投資リスクを自ら引き受けることが難しいのであれば、原発建設から手を引くのが責任ある経営判断です。
■原発ゼロ日本こそ
政府や電力会社は、脱炭素のため原発が必要だと言います。しかし、原発建設には調査期間を含めて20年かかると言われています。早くても今世紀半ばの完成で、今世紀末まで、さらには22世紀まで原発を使い続けることになります。原発建設に踏み込めば、将来にわたって日本を原発に縛り付けることになります。処分の見通しが立たない使用済み核燃料も増やし続けることになります。
日本は資源が乏しいとも言われますが、再生可能エネルギー資源が豊富です。電力でいえば、現在の需要の7倍を超えています。脱炭素というなら、国内資源である再エネこそ最大限活用すべきです。
ところが、需給調整のためとして、原発を運転させながら再エネ発電を止める出力抑制が各地で広がっています。急務となっている気候危機対策にも逆行する事態です。
参議院選挙で自公は衆参ともに少数与党となりましたが、野党にも原発推進勢力があります。原発めぐるたたかいはこれからです。国民の世論と運動で原発回帰の逆流を押し返しましょう。再生可能エネルギーと省エネルギーをすすめて原発ゼロの日本をめざしましょう。
(「しんぶん赤旗」2025年7月27日より転載)