日本共産党嶺南地区委員会 > しんぶん赤旗 > “核保有国に原発を売る 被爆国とし て言語道断”・・日印原子力協定 両国民が批判

“核保有国に原発を売る 被爆国とし て言語道断”・・日印原子力協定 両国民が批判

首相官邸前で日印原子力協定に反対する抗議運動参加者=11月20日(原子力資料情報室提供)
首相官邸前で日印原子力協定に反対する抗議運動参加者=11月20日(原子力資料情報室提供)

 安倍首相は12月11日からのインド訪問で、日本の原子力技術を輸出可能にする日印原子力協定の締結交渉を進めようとしています。核兵器を保有する同国への原発輸出体制づくりに、両国の反核団体は「核兵器開発にお墨付きを与える」との危機感を募らせます。

(安川崇)

 

安倍首相訪印で進捗か

 原発輸出を「成長戦略」の中に位置づける安倍政権はこれまで、トルコやアラブ首長国連邦などとも原子力協定を結んでいます。しかしインドは核不拡散条約(NPT)に加盟しないまま、核兵器を開発した国。日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)の田中煕日事務局長は「被爆者としてだけでなく被爆国の国民として、核保有国に原子炉を売るのは言語道断」と憤ります。

 インドは1974年の最初の核実験後の制裁で、海外から核物質や技術を導入できない状態に。独力で開発を進め、98年に核実験を実施し核武装を宣言しました。しかし米国との原子力協定を締結した2008年以降、状況が変わります。

 米国の主導で、日本を含む原子力供給国グループ(NSG)はインドをNPT体制の「特別扱い」とすることを決定。同国は核兵器の開発を続けながら、核技術や核燃料を輸入できる条件を得ました。

 その後、インドは米、仏、ロなど各国と原子力協定を締結。日本とは民主党政権時代の10年に交渉を開始し、昨年には「交渉加速」で合意しています。

 インドはウランを産出します。「特別扱い」で核燃料の輸入が可能になれば、国内産ウランのすべてを核兵器開発に回すことも可能とみられています。

 インドの反核団体「核軍縮平和連合」(CNDP)はこれについて「インドの核兵器開発を事実上後押しする」と強く批判します。

 CNDPのクマール・スンダラム氏は「インド政府は被爆国である日本と協定を結ぶことで、自国の核開発の正当性が認められたと主張したいのでは」とみています。

 

日印で「輸出ノー」の声を・・「コンカン地域の破壊的計画に反対するフォーラム」議長 ヴァイシャリ・パティルさん

「コンカン地域の破壊的計画に反対するフォーラム」議長 ヴァイシャリ・パティルさん
「コンカン地域の破壊的計画に反対するフォーラム」議長 ヴァイシャリ・パティルさん

 インド西部マハラシュトラ州で仏原子力企業からの輸入原子炉プラント計画に反対する住民運動リーダーのヴァイシャリ・パティルさんがこのほど来日し、本紙の取材に応じました。日印原子力協定に反対する理由などを聞きました。

 インド西部、アラビア海と西ガーツ山脈にはさまれた細長い地域は生物的多様性に富む。その中のジャイタプルという港町で、仏アレバ社からの輸入原子炉6基を設置する世界最大規模の原子カプラントが計画されています。

 現地の人が望んだものではない。インド政府は英国植民地時代に制定された土地収用法を使い、2005年に住民の意思を無視して強制的に土地収用を始めました。

 住民は20年以上にわたって反対運動を続けています。

 アレバが導入予定の欧州加圧水型炉(EPR)は、世界のどこでも稼働実績がありません。事故があった時、原発から半径30キロ以内に住む5万人以上の農民、漁民に何が起きるのか。人々は、自分たちが実験台にされていると感じています。

 圧力容器などの中核部分には日本の原子炉メーカーの技術が導入される見込みです。このため、計画を実現させたいインド政府にとって、日印原子力協定がどうしても必要になります。

 インドにはジャイタプルを含めて8カ所の輸入原子炉プラント計画があり、そのうち3カ所、少なくとも10の炉に日本の技術が使われる。逆に言えば、日印協定を止められれば10の原子炉の稼働を防ぐことができます。

 今回、初めて福島第1原発の周辺地域を訪ねました。道路に人はおらず、駅に列車は来ず、学校に生徒はいない。道路脇に除染土の大きな袋が並ぶ。車内で放射線測定器が警戒音を出していました。

 ジャイタプルで事故があれば、何十もの町や村に同じことが起きる。目で見て、恐ろしさを実感しました。

 日本外務省との面会で現地住民の思いを訴えましたが、「それはインドの内政問題。インド政府は協定を求めている」とかわされました。怒りというより、悲しかった。

 日本の原子炉企業は国内市場に望みがない中、インド市場に期待している。でも現地には人間が住んでいます。商売の機会としてだけで見ないでほしい。

 インドの表現の自由は不十分で、国の開発事業に反対する者は「反国家」だと非難されます。

 再稼働に反対する日本の市民も、原発輸出反対の声を強めてほしい。両国の運動で連携し、両政府に対して「原子力協定ノー」の圧力を強めたいのです。

インドと原子力発電

 インド原子力公社が国内で21基の原子炉を運転していますが、総発電量に占める割合は3%にとどまります。しかし経済成長に伴う需要増を見込み、2050年までに同25%に拡大する計画。08年の米印協定以降は輸入原発による巨大プラント計画を多く推進しています。

(「しんぶん赤旗」2015年12月11日より転載)