震災から間もなく3年がたちますが、宮城県では、今でも3万6997戸、8万8006人(1月現在)の被災者が仮設住宅で暮らしています(ピーク時の約7割)。プレハブ仮設住宅だけで見ると、ピーク時の8割です。復興の一番の課題である「住まいの再建」が大きく遅れています。
地価が高騰
まず、自立再建ですが、防災集団移転での、元の土地の売却額が評価額の7~8割と言われ、新たに土地を求めても家が建てられないと悩む被災者が多く、再建を阻んでいます。
石巻市では土地不足から地価が高騰し、再建をあきらめる被災者が出てきています。
津波で被災した沿岸部の高台への防災集団移転は、計画地区数195地区、1万2500戸で、着手率77・9%ですが、完了したのは、わずか7地区、3・6%にすぎず、被害の大きかった石巻市、気仙沼市、女川町、南三陸町ではゼロです。
復興公営住宅の建設も、計画戸数1万5608戸に対して完成したのは322戸、2・06%(1月末現在)だけで、県が建設する1000戸は計画すら立っておらず、″できれば県営住宅は建てたくない″という県の態度は許せません。
復興公営住宅の入居が決まっても、まだ大きな問題があります。引っ越し代や敷金、家賃が自己負担だということです。被災者の声に押され、引っ越し代を助成し、敷金を免除する自治体も出てきていますが、自治体によってばらつきがあります。
県は昨年(2013年)、県営住宅の家賃減免制度を改悪し、今年の4月から家賃免除をなくし、収入がゼロでも家賃がかかるようにしてしまいました。「仕事がない」「生活再建支援金を使い果たした」など、「家賃がかかるなら、復興公営住宅には入居できない」という声すらあがっています。
震災前遠く
生業(なりわい)の再建も、津波被災地では、多くの被災者が漁業、農業を営んでいましたが、農地復旧は67%、漁港の復旧は13%など、まだまだ震災前には戻れていません。
中小企業等グループ補助金による支援は3547事業所に2250億円が交付決定されていますが、進捗(しんちょく)率は60%にとどまり、具体的な雇用に結びつくまでにはまだ時間がかかります。
県の復興が大きく遅れている最大の原因は、村井嘉浩知事が、財界系シンクタンク・野村総研の全面支援を受けて策定した「復興計画」にあります。それを審議した復興会議は、12人の委員のうち、県内在住者はわずか2人で、現場の声はまったく反映されていません。
それが、「創造的復興」という名で、上から目線で被災地にモデルが押し付けられ、巨大防潮堤建設、水産特区導入、仙台空港の民営化などの事業を次々と進め、被災者の生活と生業の再建を後回しにしています。
いま必要なことは、県の「復興計画」を見直し、「人間の復興」の原点に立ち返って、被災者が「どうすれば安住できる住まいを確保できるのか」「どうすれば生活と生業を再建できるのか」と、被災者の立場に立って考え、支援することです。
聞き手 宮城県・佐藤信之