
東京電力は先月、福島第1原発2号機で、事故で溶け落ちた核燃料デブリの2回目の試験的取り出しを完了しました。採取したデブリは研究機関で分析し、本格的な取り出し工法の検討などに役立てるとしていますが、全量回収には困難な長い道のりが予想されます。(「原発」取材班)
今回採取したデブリは複数個あり、最大のもので5ミリメートル程度、重さは約0・2グラムでした。昨年秋に初めて取り出したデブリは原子炉圧力容器直下の領域内の比較的外側の場所から採取しましたが、今回は、中心により近い場所から採取することができました。つり下ろした器具に装着したカメラの画像から、原子炉格納容器底部にテーブル状の堆積物があることも判明しました。
取り出し作業は、「テレスコ式」と呼ばれる、伸縮可能な釣りざお状の回収装置を使用。この装置を格納容器の開口部から挿入し、原子炉直下の格子状の足場が事故で損壊して開いた穴の所まで“さお”を伸ばして、その穴から、デブリをつかむ爪のような器具を底部までつり下ろして採取しました。事故現場は放射線量が高いため、装置は遠隔で操作します。
昨年の1回目の取り出しでは、着手直前の8月下旬に準備作業のミスが発覚。カメラの不具合による中断もあり、作業が完了したのは11月7日でした。その教訓を踏まえて対策した今回は、4月15~23日の9日間で実施できました。2回とも、60~70人ほどの同じ作業チームで実施しました。
戦略必要との指摘
事故対策の責任者を務める東電・福島第一廃炉推進カンパニーの小野明代表は2回目の作業が完了した翌日の記者会見で、「前回の苦い経験を振り返ってしっかり反映して取り組んだ。作業の習熟度も上がり、スムーズに進んだ」と述べるとともに、周辺の映像が得られたことを「将来に向けても大きなポイントと思っている」と評価しました。
採取したデブリは、日本原子力研究開発機構(JAEA)に輸送されました。1年~1年半ほどかけて元素組成や結晶構造などを分析します。
デブリの試験的取り出しは当初、ロボットアームを使って2021年に実施する計画でした。しかし開発の遅れやケーブルの経年劣化などが見つかって延期を繰り返すなかで、テレスコ式の装置を使ったという経緯があります。東電は、3回目はロボットアームで今年度末までに着手したいとして準備中。その後、段階的に取り出し規模を拡大する計画です。
原子力規制委員会の山中伸介委員長は4月23日の記者会見で、2回のデブリ採取で多様性のある試料が得られたと評価する一方で、「やみくもに今取れる所から拾ってくるというのは意味がない」などとして、硬さやもろさなどの機械的な性質、分布などどのような情報が必要なのか、大規模取り出しに向けた戦略が必要だと指摘しました。
総量推定880トン
炉心溶融を起こした1~3号機には、総量880トン規模のデブリがあると推定されています。政府と東電は2051年までに廃炉を完了させるとしています。
今回、廃炉推進カンパニーの小野代表は、工程について問われ「現時点で見直す必要はない」と述べました。しかし、事故発生から14年たった今、ようやく試験的取り出しが始まったばかり。本当にデブリの全量を取り出すことができるのか、実現性は不透明です。
(「しんぶん赤旗」2025年5月26日より転載)