
【台北=小林拓也】台湾は17日夜、南部・屏東県の第3原発2号機が運用期限を迎えて稼働を停止し、原発ゼロを実現しました。同日夜、台北市内の台湾電力ビル前で台湾の市民らが脱原発を記念する集会を開催。午後10時に原発の発電量がゼロになると、参加者は歓声を上げ、「ノー・ニュークス・台湾、ノー・ニュークス・アジア」とスローガンを響かせました。
集会を主催した「台湾環境保護連盟」の謝志誠会長はあいさつで、「1978年12月に台湾で初めての原発が商業運転を開始して1万6965日がたち、ついに原発がゼロになる。原発ゼロがいつまで続くのか、われわれは引き続き奮闘する義務がある」と訴えました。
「緑色公民行動連盟」の崔ソ欣(さい・そきん)事務局長は「喜ぶべき時ではあるが、野党などは原発の復活を狙っている。真の原発ゼロ実現に向け、最後まで闘い抜こう」と呼びかけました。
集会には日本や韓国などアジア各地の市民も参加。全アジアの脱原発に向けた決意を固め合いました。
環境保護連盟初代会長の施信民氏は「アジアで初めて脱原発を実現した台湾は、アジア各国のモデルとなり、各国の反原発運動を鼓舞する役割を発揮できる。今後も全アジアの原発ゼロ実現に向け、アジア各国の市民と共に努力していきたい」と語りました。
通りがかりで集会に参加した台湾師範大学4年生の男性は「2011年の福島第1原発事故に衝撃を受け、原発に反対するようになった。脱原発はうれしいが、核廃棄物をどうするのかなど解決すべき問題はたくさんある」と話しました。
台湾では福島の原発事故を受け、原発反対の世論と運動が拡大。建設中だった第4原発が14年に建設停止になりました。16年に発足した民進党の蔡英文(さい・えいぶん)政権は世論を受け、脱原発実現を決定。頼清徳政権もこれを受け継ぎました。
一方、国民党など野党は「電力の安定供給のため」として原発に固執。野党が過半数を占める台湾の立法院は13日、原発の稼働期間を60年に延長することを可能とする法改定を強行しました。また野党は、第3原発再稼働を問う住民投票の実施も狙っています。
台湾メディアによると、台湾の卓栄泰行政院長は17日、原発が停止しても、当面は電力が不足することはないと明言。発電量に占める再生可能エネルギーの比率は、来年末には20%超の目標を達成するだろうとの見通しを示しました。
(「しんぶん赤旗」2025年5月19日より転載)