100回を超えた原子力規制委員会の新基準適合性審査会合・・。九州電力川内原発(鹿児島県薩摩川内市)の審査に力を集中する体制がとられ、審査は大詰めを迎えています。問答でみました。
Q 川内原発の扱いは特別なの?
A 昨年(2013年)7月の審査開始以降、審査が申請されたのは8電力会社の10原発17基で、国内原発の3分の1を超えています。
川内原発はいわば″特急″扱い。規制委は九州電力が地震想定を540ガルから620ガルに引き上げたことなどから3月13日、川内原発を優先審査することを決め、他の原発の担当者も投入して審査書案の作成に向け取り組んでいます。他の原発の審査は「余力で行う」(担当管理官)というのが実情です。
Q どうして原発を絞り込み、審査を急ぐの?
政治の圧力
A 背景に政府・自民党の再稼働に向けた動きがあります。茂木敏充経済産業相は2月18日の会見で「規制委が審査の見通しを示すことは、事業者が経営に見通しを持つ上で有益」と発言。町村信孝元官房長官は同月27日の派閥会合で、「(審査にかかる時間は)常識から外れているのではないか」と述べ、政治からの独立性がうたわれている規制委に圧力をかけました。
規制委が一原発を優先審査とすることは、政府・自民の圧力に沿った形で審査終了の突破口を開こうというものです。
Q 川内原発の審査の現状は? A 規制委は「審査は一通り終わり、大きな宿題はない。細かいところはヒアリングで」(担当管理官)として、公開審査を収束する方向です。九電はこれまでの審査で指摘された事を反映した設置変更許可申請書を出しなおし、規制委は″合 格書″にあたる審査書作りに取りかかります。
しかし、九電の対策の根底をなすコンピューターによる解析方法の妥当性の評価や、九電も認めた過去の火山活動で火砕流が原発敷地内に到達した可能性を受けての対策などが、まだ残っています。
Q 審査書が出れば、再稼働になるの?
避難は審査外
A 政府は「規制基準に適合した原発は再稼働を進める」とエネルギー基本計画案に明記し、地元の鹿児島県、薩摩川内市も再稼働に前のめりの姿勢です。しかし、規制委の新基準は、原発事故で放射性物質が放出されることへの対応を前提にしているのに、住民の安全を守る上で重要な避難計画を審査対象にしていません。東京電力福島第1原発の事故の教訓を踏まえたものになっていません。
直近の世論調査を見ても「再稼働反対59%、賛成28%」(「朝日」3月15、16日調査)という結果が出ています。再稼働を阻止する運動を強めることが大切です。