東京電力は5月27日、福島第1原発のタンク群にためていた高濃度汚染水について、多核種除去設備(ALPS=アルプス)などによる処理を、タンク底部の残水を除いてすべて完了したと発表しました。
東電は「汚染水によるリスク低減という目的が達成できた」としていますが、処理後の水には高濃度のトリチウム(3重水素)など除去できない放射性物質が残っているほか、原子炉建屋地下などに流入する地下水によって高濃度汚染水が1日当たり300トン増え続けているなど、解決にはまだ遠い状況です。
処理が終わった汚染水の総量は約62万トン。そのうち約44万トンはトリチウム以外の62種類の放射性物質を基準以下まで低減するというALPSで処理、約18万トンはストロンチウムを低減するRO濃縮水処理設備で処理しました。タンク底部に残っているポンプでくみ上げきれない汚染水の量は、推定1万トン程度。
東電は当初、今年3月末までに汚染水を全量処理すると安倍首相に約束していましたが、汚染水処理の″切り札″と位置づけるALPSでトラブルが多発。1月に目標の断念を発表していました。
今回、東電は処理を「完了」したとしていますが、ALPSでの処理が完了したのは7割。残りの18万トンはALPSで再処理する必要があり、それが終わる見通しはたっていません。またALPS処理水も、トリチウム以外の放射性物質が国の放出基準を必ずしも満たしていないことを、東電は認めています。
基準を大きく超える濃度のトリチウムを含むALPS処理水が大量にタンクに残っていることについて、原子力規制委員会は「5年以内に海洋放出する」という考えを今年2月に示しています。
(「しんぶん赤旗」2015年5月28日より転載)