原子力規制委員会は5月27日、九州電力川内原発(鹿児島県薩摩川内市)の重大事故対策の体制などを定めた「保安規定」を認可しました。川内原発1、2号機は、13年7月の新規制基準施行後初めて、基本設計などの許認可で、審査を終了したことになります。
巨大噴火の影響が心配されている川内原発の審査をめぐっては、学会から火山の審査基準を見直すよう求められるなど多くの問題が浮き彫りにされました。しかし、規制委は見直していません。住民の不安は置き去りにされたままで、地元などからは「世論を無視して再稼働は許されない」との声が上がっています。
保安規定は、原発の運転や管理の方針を定めた文書で、重大事故に対応するための体制整備などを定めたものです。
巨大噴火による影響について、九電は火山活動を監視し、巨大噴火への発展の可能性があると評価される場合には、社長の指示で原子炉を停止、燃料を搬出します。しかし、燃料の搬出先は、その評価がされた場合に検討することになっており、具体的な計画は示されていません。九電は審査を終了したとして、3月から実施中の使用前検査を経た後、まず1号機について、7月下旬の再稼働を、2号機は9月下旬をねらっています。
2件の異議申し立て
原子力規制委員会が3月18日に行った九州電力川内原発1号機(鹿児島県薩摩川内市)の工事計画認可の取り消しを求める行政不服審査法に基づく2件の異議申し立てがありました。(5月)27日の規制委の定例会合で報告されました。
規制委は、これらの異議申し立ての審理や資料、議事録を非公開とし、決定後に議事要旨などを公開することを決めました。
一つは14日に異議申し立てが行われたもので、機器の独立性の問題や安全避難通路の虚偽申請などを指摘。15日には、耐震性の重大な欠陥などを指摘し、口頭意見陳述を求める申し立てがされています。
地元から怒りの声
原子力規制委員会が27日、九州電力川内(せんだい)原発1、2号機(鹿児島県薩摩川内市)の「保安規定」を認可し、再稼働に必要な審査を完了したことに、地元から怒りの声があがっています。
国は収束に力を注げ・・「原発なくそう!九州川内原発訴訟」原告団長森永明子さん(44)
福島原発事故で避難を余儀なくされ、生活を奪われた人たちを思えば、国は再稼働の前に一刻も早い収束に力を注ぐべきです。
両稼働することは事故時に避難や移住の恐れがあるということです。原子力規制委員会は「絶対安全ではない」といい、国や県は「世界一安全」という。矛盾しています。県民世論を無視して無理やり再稼働して誰が責任を取るのでしょうか。
私には、運動が広がり全国と連帯して再稼働を食い止めてきた実感があります。悔いが残らないために声を上げ続けます。
廃炉へ追い詰めたい・・「川内原発民間規制委員会・かごしま」事務局 岩井哲さん(68)
私たちは、原子力規制委員会の新規制基準そのものに根本的な批判を持っています。新規制基準に基づく事故対策の誤りを指摘し、3月には九電に対し、16項目にわたる勧告をしました。
勧告は、福島原発事故で非常用炉心冷却装置(ECCS)の活用の徹底がなされなかったことなどを教訓にし、炉心損傷防止のための対策を求め、6月にも交渉する予定です。
九電は勧告に何ら答えられず、はぐらかしています。引き続き交渉しながら廃炉に追い詰めていきたい。
(「しんぶん赤旗」2015年5月28日より転載)