4月28日に開かれた2030年時点の電源構成(エネルギーミックス)を審議する経済産梨香の有識者会議では、原発や再生可能エネルギーの比率をめぐって、委員から疑問や意見が相次ぎました。
福島原発事故後に廃炉が決まった以外の原発を原則40年で運転させると2030年時点で15%程度であり、経産省の原案(20〜22%)との間に5〜7%の差があるからです。東京理科大学の橘川(きっかわ)武郎教授は「一番心配なのは原発のこと。この差についてどういう見通しを持っているのか」と述べ、消費者団体連絡会の河野康子事務局長も「新増設を見込んでいるのか」と質問しました。
一方、野村総合研究所の増田寛也顧問は、「原発についてはリプレース(同じ原発敷地内での建て替え)を考えるのが今後の課題」と強調し、京都大学の山名元・名誉教授は「最低限でも寿命延長。あるものを大事に使おう」と発言しました。
事務局を担う経産省の担当者は「(原発など)ベースロード電源は重要。われわれは事業者(電力会社)の事業環境整備を進めていく」と原発の寿命廷長の条件整備を進める考えを示しました。
また、名古屋大学大学院の高村ゆかり教授は「地方活性化のために全国知事会からも太陽光や風力の拡大の要望は強い。積み増す方向での検討を」と要望。橘川教授も環境省の検討会で示された再生可能エネルギーの比率(30%以上)を挙げて積み増しを要望しました。
これに対し、事務局は「(環境省の数字は)かなりずれた議論で出された数字であり、地方のメガソーラーは本当に地産地消か疑問」などと述べました。
経産省案を批判・・市民団体が声明
原発のない社会の実現を求めて政策提言をする市民団体「原子力市民委員会」は4月28日、東京都内で会見し、「エネルギーミックス(電源構成)は原発ゼロ社会の実現を前提に策定すべきだ」とする声明を発表しました。2030年時点の電源構成について原発依存度を2割台にする経済産業省の原案に対し、「原発の根本的な問題点を直視していない」と批判しています。
声明は、原発に固執することで、再生可能エネルギーの導入や省エネルギーを軽視し、「本格的な気候変動対策を停滞させる可能性が高い」と指摘。原発を2割台にする原案は、廃炉が決まった原発以外の43基すべてを再稼働させ、建設中の原発も稼働させることや老朽原発の運転延長も想定しており、「現実性も国民的合意もない」と批判します。
会見で、同委員会の座長で九州大学教授の吉岡斉氏は、原案について「国の『エネルギー基本計画』で『原発依存度は可能な限り低減させる』とあったのに、(原発依存度を)一切低減しない極端な内容だ」と述べました。
(「しんぶん赤旗」2015年4月29日より転載)