3月24日に福島地裁で開かれた「生業(なりわい)を返せ、地域を返せ!」福島原発訴訟第11回口頭弁論では、1991年に起きた東京電力福島第1原発1号機の海水配管の漏えい事故の教訓が焦点になりました。
91年の事故とは、1号機のタービン建屋地下の地中にあった海水配管が損傷し、そこから漏れた海水で、地下に置かれた1、2号機共通の非常用ディーゼル発電機や制御盤などが浸水し、機能喪失したというものです。
海水漏えいが運転中に発見されたため、運転を停止しました。
この事故について、第1原発の吉田昌郎元所長は「政府事故調」の調書で、「今回のものを別にすれば、日本のトラブルの1、2を争う危険なトラブルだと思う」と述べています。
吉田氏はまた、「あのときに私はものすごく水の怖さがわかりましたから、溢水(いっすい=水があふれ出ること)対策だとかは、まだやることがあるなという感じはしていました」と語るなど、何度も言及しています。
この日、原告側証人の舘野淳氏(核燃料化学専門、元中央大学教授)ら2人の専門家の陳述に対する、国と東電の反対尋問が行われました。
その中で、国や東電は、91年の事故は、配管に穴が開いた内部溢水の事故であり、2011年3月の事故は津波による外部溢水の事故だと強調。内部溢水対策はその後、実施したが、それをしたからといって、今回の事故を防ぐことができたとはいえないなどとしています。
これに対し、舘野氏は、「内部溢水と外溢水を区別するのが問題であって、どちらも溢水事故として類似したものだ」と指摘。「非常用ディーゼル発電機や電気系統に水が入ると機能喪失になる。吉田所長も言っているように、水に対する防護がされなかったのが大きな問題だった」と述べ、その後の防護対策がされなかったと指摘しました。
潮見直之裁判長は、事故の翌年に通産省に報告された「原子炉施設故障等報告書」をもとに当時の状況を確認した上で、舘野氏に「対策を考える上で、どういう教訓を得るべきか」と質問しました。
舘野氏は「電気系統が重要手段の場合、水を重視して対応すべきであった」と述べました。潮見裁判長はさらに、第1原発が、もともとあった丘陵を20メートル掘り下げて設置されていた理由や、2011年3月の津波について舘野氏に質問しました。
同訴訟は、福島県内外の約4000人が国と東電に原状回復と慰謝料を求めたもので、両者の法的責任を明らかにすることを目的の一つにしています。
次回は5月19日で、津波の現場調査や歴史上の地震、津波の研究を続けてきた都司(つじ)嘉宣・元東京大学地震研究所准教授の証人尋問を決めました。同訴訟で証人に採用された専門家は4人目です。
(「しんぶん赤旗」2015年3月29日より転載)