日本科学者会議は3月16日夜、第3回国運防災世界会議の一般公開事業としてシンポジウム「大震災の経験を学び 防災復興のあり方を考える」を仙台市内で開きました。
「創造的復興」と称して大企業重視や開発を優先し、被災者の生活再建をないがしろする復興政策を告発。これに対峙(たいじ)する理念として「人間の復興」を掲げました。
日本科学者会議地震・津波災害復興研究委員会の綱島不二雄委員長が司会進行し、序章から終章まで8人の研究者が報告しました。
復興のあり方について述べた室崎益輝・神戸大学名誉教授(日本災害復興学会前会長)は、被災前の状態に戻すだけではない復興が必要だと指摘。本来、「創造的復興」は開発主導ではなく、災害が顕在化させた社会の矛盾や欠陥を変革する「世直し復興」であるべきだとしました。
塩崎賢明・立命館大学教授は、復興政策や事業の誤りで被災者がさらに被害を受ける「復興災害」の注意を呼びかけました。阪神・淡路大震災での教訓をもとに、仮設住宅から次の住まいに移る際の道筋によっては、コミュニティーの分断などで孤独死が起きうるとしました。
また、東日本大震災の仮設住宅の多くは劣悪で、カビの発生で病気になった被災者もいると告発。視察したイタリアの仮設住宅は一戸60平方メートルと日本の2倍の広さだったと報告し、「マンションのようで、仮設とは思えない。電化製品や家具一式、食器もついていた。これを見てがくぜんとした」と語りました。
被災自治体の震災対応を検証した平岡和久・立命館大学教授は、政府が進めた行政改革や合併が公共部門の余裕を奪って対応を困難にしたと分析。復興を派遣職員が担う現状も示し、「行革を止めて自前の職員を雇うのを政府が応援しなければ、持続的な復興にはならない」としました。
鳥畑与一・静岡大学教授が被災企業の二重ローン問題を、片山知史・東北大学教授が水産業の復興状況を報告。そろって、「創造的復興」を押し付けるよりも、まず被災前に戻す復旧の支援が重要だと主張しました。
宮入興一・愛知大学名誉教授が復興財政について、川瀬憲子・静岡大学教授が被災自治体の財政について述べました。
(「しんぶん赤旗」2015年3月18日より転載)