地震と津波に加え、東京電力福島第1原発事故の被害が続く福島県では、被災者の生活再建の遅れがより深刻であることが、被災者300人実態調査からも浮かび上がります。被災者からは原発事故をめぐって国と東電への怒りが噴出しました。
「原発事故前の地域に戻る展望はありますか」との問いに、「展望はない・あきらめた」が62%、「あまりない」が16%で、計78%に上りました。
飯舘村から避難し、福島市内の復興公営住宅に住む佐藤幸子さん(25)は、「1歳と3ヵ月の男の子がいます。放射能が気になり、戻ることはあきらめました」と話します。
双葉町から郡山市の仮設住宅に避難中の男性(87)は、「帰りたいが5年はかかる。先祖にすまない。でも必ず双葉に帰ります」と声を絞り出しました。
減った若い世代
生業(なりわい)の再建の見通しについて、福島県では85%が
「めどがただない」と回答。「あまり進んでいない」(6%)と合わせて91%に上りました。岩手、宮城両県(計48%)と比べても遅れは深刻です。
南相馬市のかしま福幸商店街で飲食店を営む高橋秀典さん(43)は、「若い世代が減り、再建のめどがたちません。国は若い人が戻れるよう努力してほしい」と話します。
就労状況についても、福島県では「失業中」が44%と深刻です。
生活再建の展望がなかなか見えないもとで、健康状態が「悪い」という人は福島県では29%に上ります。
浪江町から福島市の仮設住宅に避難している女性(58)=パート=は、野菜をつくって直売する準備を整えた矢先にすべてを壊されました。「健康だったのに避難後、ストレスで心身症に。浜通りのことを見聞きすると血圧が上がってしまう」
賠償打ち切りも
賠償に関して被災者を線引きし、打ち切る国と東電への怒り、不満が渦巻いています。
南相馬市原町区から新地町の仮設住宅に家族4人で避難している
渡部優子さん(36)は、「自宅は居住制限区域の近く。賠償だけ打ち切られてもう関係ないよと言われている感じ。夫の両親は戻りましたが、線量が高く、子どもが不安で戻れません」と訴えます。
安倍政権が進める原発再稼働に「反対」という回答は被災3県で72%と圧倒的です。
桑折町の佐藤昇さん(74)は語ります。「東電は汚染水漏れも黙っていた。信頼できない。今度事故があったら日本に住めなくなってしまう。これからは原発をなくすべきです」
(つづく)
(しんぶん赤旗2015年3月15日付けより転載)