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原発優先で再エネ抑制 女川再稼働の東北エリアで激増/全国では50万世帯分に相当の見込み

NPO法人おながわ・市民共同発電所の大六天太陽光発電所の前に立つ高野博さん=7月、宮城県女川町(高野さん提供)

 各地で太陽光発電などの再生可能エネルギーの出力制御(抑制)が広がっています。日本では発電量が電力消費を上回りそうな場合、原発の電力を優先供給し、火力発電も停止はせず、太陽光発電や風力発電を抑える出力制御をしています。各社の見通しによれば、今年度は全国で約20億キロワット時が抑制される見込みです。約50万世帯の年間消費電力量に相当します。(松沼環)

 全国的に再エネが増えていることに対して、原発の再稼働が大きな影響を与えています。東北電力女川原発2号機が去年10月に再稼働した東北電力ネットワークのエリアでは、昨年度の出力制御量は2・1億キロワット時でしたが、今年度は3・8億キロワット時と大幅に増える見込みです。

懇談実現せず

 太陽光発電を行う宮城県女川町のNPO法人おながわ・市民共同発電所の大六天太陽光発電所の場合、昨年4~6月は3回出力抑制がありました。それが今年は同時期に13回に激増しました。

 同発電所は、売電した利益から女川町の子どもたちに奨学金を出しています。同発電所の高野博理事(82)は「平均で1年に20人ぐらいに給付型奨学金を出していますが、会計上ギリギリ。役員は無報酬でお願いするなどして、やっと運営できている。売り上げがさらに減額されれば、奨学金の額を下げないといけなくなる」と言います。その上で、出力制御について「せっかく作った電気をただ投げ捨てているのももったいない。原発を止めればこんなことはないのに」と話します。

 宮城県内の再エネ関連の市民団体は、出力制御の今後の見通しを教えてほしいと東北電に懇談を申し入れましたが、実現していません。高野さんは「このままでは、再エネの伸びが抑えられてしまう」と懸念しています。

ルール変更を

 再エネの出力制御は、九州電力送配電エリアで始まった18年には約1億キロワット時でした。22年度には全国の七つの送配電エリアに拡大。23年度には東京電力パワーグリッド以外の全国九つのエリアに拡大。24年度には、九つのエリアで約16億キロワット時が抑制されました。

 今年3月の東京電力パワーグリッドの見通しでは、同社のエリアでも出力制御が見込まれています。

 日本では、経済産業省が定めた出力抑制の順番(優先給電ルール)で、再生可能エネルギーよりも原発が優先されます。原発は出力制御されたことはありません。

 出力制御時に捨てられる電力の補償もされないことから、今後の再エネ投資が抑制されると指摘されています。他国では再エネ電力を優先的に供給しており、日本も再エネ優先のルール変更が求められます。

日本共産党の主な再エネ政策

・再エネの電力比率を2035年度に8割、40年度までに100%を目指します。

・再エネの優先利用の原則を確立し、大手電力会社が再エネ電力の導入にブレーキをかけることや、太陽光をはじめ再エネ発電の出力抑制を中止させます。

・再エネ導入の障害となっているメガソーラーや大型風力などのための乱開発をなくす規制を強化します。

(「しんぶん赤旗」2025年7月24日より転載)