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原発しがみつく無謀/新設調査表明 識者から談話

関西電力の美浜原発の外観=2024年、福井県美浜町

 関西電力が原発の新増設に向けて福井県美浜町に立地する美浜原発で地質調査を開始すると発表したことに、有識者らからコメントを寄せてもらいました。

大地震襲いうる場所の認識欠落

新潟大学名誉教授 立石雅昭さん

 福井県の若狭湾に面した嶺北地域は、原発銀座と呼ばれ、関西電力の高浜・大飯・美浜の各原子力発電所、さらに、日本原子力研究開発機構の高速増殖炉「もんじゅ」(廃炉決定済み)、日本原子力発電の敦賀原発と並びます。

 美浜・もんじゅ・敦賀原発はいずれも敦賀半島に立地します。この敦賀半島を含む若狭湾一帯は、従前近畿トライアングルと呼ばれる地質構造区の北部を成し、およそ100万年前から、東西および、南方からの圧縮を受けて、隆起と沈降が進行してきた地域として知られます。

 美浜原発は、東は長さ約15キロメートルの白木―丹生断層、西は長さ約18キロメートルのC断層に挟まれ、さらにこれらの断層はその南端で、長さ約31キロメートル、M7・3程度の地震が発生しうるとされる野坂断層に合流します。

 野坂断層は南は集福寺断層と、北は若狭湾の大陸棚外縁断層に連なる可能性も指摘されます。敦賀半島周辺は、若狭湾沿岸の中でも特に活断層の多い箇所です。

 関西電力は新しい原発を建造するために、これから美浜原発敷地内でボーリング掘削などで、あらためて地質・地質構造を調べるとしていますが、現在でも大地震が襲いうる場所だという認識が欠落していると言わざるを得ません。

その場しのぎの理不尽

福井・小浜の明通寺住職 中嶌哲演さん

 怒り心頭です。参院選では沈黙していて、選挙が終わると表明するのが卑劣極まりない。

 関西電力は老朽原発を動かし続け、使用済み核燃料をどんどん増やし続けています。国が原発を最大限活用する方針に転換して以降、関西電力の傲慢(ごうまん)さは目に余ります。老朽原発を駆使しながら、原発にしがみつく姿勢です。

 原発の新増設というものが出てくること自体、いかに老朽原発が危険なものであるかを逆に物語るものだと思います。

 老朽原発を動かし続けることも、次世代型原発の建設をめざすことも、両方が、結局は原発を延命させる路線だと思います。関電は理不尽なことをその場しのぎでやっています。

 メディアは、老朽原発の運転延長と次世代型原発の建設の両方ともが、原発にしがみつく原発の延命路線であることに根本的な批判を集中してほしい。こんな延命路線は絶対に認められません。

福島第1の事故を無視

原発問題住民運動全国連絡センター代表委員 伊東達也さん

 関西電力は地形や地質の調査と言いますが、調査は造ることが大前提です。それだけと真に受けてはいけません。森社長が言った“安全最優先で、原子力の安全・安定運転に全力に取り組む”などの言葉は現代流の言い方なだけで、本質的には60年前に福島で原発を造る時に言ったことと同じです。原発新増設を進める関西電力の動きは、住民の帰還も進まず、多くの県民が苦しみ続ける福島第1原発事故を無視する最たるもので、決して許すことはできません。

 革新軽水炉と言っても、原理的に過酷事故を起こさない原発ではなく、世界有数の地震国で絶対安全に運転できる新型原発はあり得ません。原発を新設することは今後、放射性廃棄物を一層増やすものであり、日本の未来に希望を灯(とも)すものではありません。

 当面の企業の利潤追求に走らず、多くの国民が望まない原発新規計画であることを関西電力の首脳者は考えるべきです。

(「しんぶん赤旗」2025年7月23日より転載)