企業の節電限界?
ポイント
・80年代半ば以降停滞
・企業まかせではダメ
・50%超の省エネ可能
再生可能エネルギーの普及と並んで、原発依存からの脱出に重要なのが省エネルギーです。なかでも、エネルギー消費の大部分を占める企業活動に規制をかけることは欠かせません。
ところが、エネルギー基本計画案は、産業部門は1970年代の石油危機以降に高い省エネを達成したので、今後は企業の自主的な取り組みを後押しすることが必要だといいます。企業まかせです。
73年の石油危機を契機に進んだ日本の省エネは、80年代半ば以降完全に停滞しています。製造業の場合、73年度のエネルギー消費原単位(一つの製品をつくるのに必要なエネルギー量。数字が小さいほど効率的)を100とすると、89年度以降ほぼ一貫して効率が落ちています。(グラフ)
政府はこれまでも、「日本は世界最高水準のエネルギー効率」という財界の言い分をうのみにし、温室効果ガスの排出削減や省エネの取り組みを経団連の「自主行動計画」まかせにしてきました。
環境NGO(非政府組織)気候ネットワークの試算によれば、経団連計画に参加した34業種のうち石油精製や工作機械など10業種で、2010年のエネルギー効率が1990年比で悪化。気候ネットは、企業任せにした結果「技術開発を遅らせ、国際競争力を低下させた」と批判しています。
WWF(世界自然保護基金)ジャパンは、現在ある省エネ技術の導入を促進するだけで、日本全体で50年までに08年比50%超の省エネが可能だとしています。
反対論は感情的?
ポイント
・危ない原発教育推進
・国民無知と決めつけ
・人類と共存できない
基本計画案は、東京電力福島第1原発事故で「国民の間に原子力に対する不安・不信が高まっている」とし、信頼回復に向け「原子力に関する教育の充実を図る」といいます。原発教育の推進です。
『基本計画案が議論された経済産業省の審議会では、原発推進の委員から「原発は重要だという意見と、原発は怖いという感情的な意見の対立がある」(山名元・京都大学原子炉実験所教授)などの発言が相次ぎました。国民が無知だから原発に反対していると言わんばかりです。
基本計画案は、原発教育の中身として、福島事故後につくられた原子力規制委員会の新規制基準、原発の経済性、国際動向などを挙げます。エネルギーの専門家や事業者、行政官が積極的に教育現場に参加することも求めています。
原発推進の御用学者、東電や関電といった事業者、経産省などの行政官によって、新規制基準は世界で最も厳しく、原発は他のエネルギーに比べて安くて安定的で、世界的にも増え続けるという″教育″が、学校などで行われることになりかねません。
原発は安くもなければ安定的でもなく、21世紀の世界の主流でもありません。なにより福島原発事故によってはっきりしたのは、原発と人類は共存できないということです。
基本計画案は、原発に反対する世論を感情論と決めつけ、原発教育で新たな「安全神話」をすりこもうとしています。国民世論を無視する安倍晋三政権の暴走が、エネルギー政策でも発揮されようとしています。
(おわり)
(しんぶん赤旗2014年3月20日付けより転載)