構内の森や桜並木は切り倒され、灰色のタンク群が広がります。水素爆発で大破した原子炉建屋は姿を変えましたが、内部の放射線量は依然高い。事故から間もなく4年。東京電力福島第1原発は汚染水対策に追われながら、遠い廃炉への道を手探りで進んでいます。
2月26日、第1原発に時事通信記者が入りました。雨の中、1号機原子炉建屋の西約100メートルの高台でバスを降りると、東電の担当者が「放射線量が高いので短時間でお願いします」と注意を促しました。線量計は毎時300マイクロシーベルト前後を示しました。
■無残な壁
1号機を覆う白いカバーは、解体に向け準備が始まっています。南側には爆発を免れた2号機。その脇にある大物搬入口の屋上にたまった放射性物質を含む雨水が、排水路から海に流出したことが明らかになったばかり。
隣の3号機は水素爆発で原子炉建屋上部が吹き飛びました。放射線量が高いため遠隔操作で大きながれきを撤去し、上部は平らになっています。使用済み燃料プールからの燃料取り出しに向け、建屋はクレーンなどの足場になる構台で囲まれましたが、2号機側で崩れた壁が今も無残な姿をさらしています。
廃炉作業が最も進んでいるのは4号機。事故当時は定期検査中で原子炉内に燃料がなく、炉心溶融(メルトダウン)を免れました。燃料プールに1535体も燃料があり危険視されましたが、昨年12月に取り出しを終えました。
燃料プールがある5階に上がりました。放射線量は毎時10マイクロシーベルト。プールには制御棒などが残っていますが、他の作業を優先するため水を張ったまま置かれています。
■灰色地面
構内の樹木は多くが伐採され、汚染水を保管するタンクが800基余り並びます。あちこちで表土が削られ、雨水が地面に染み込むのを防ぐため灰色のモルタルが吹き付けられていました。染み込んだ雨が建屋地下に流れ込み、汚染水が増えるのを防ぐためです。
東電は汚染水の増加抑制策として、地下水のくみ上げや建屋周囲の土壌を凍らせて「水の壁」を造る計画を進めていますが、担当者は「(地面を覆う)フエーシングは効果が高い」と期待します。
プレハブの上に大きな文字で「子供たちの未来のためにがんばろう」と掲げられていました。第1原発では1日6000〜7000人が働きます。正門脇には3階建ての仮設休憩所が2棟。企業ごとに分かれ、カーペットの座敷で作業員が休んでいました。
(「しんぶん赤旗」2015年3月4日より転載)