のぼる 少しずつ春らしい天気になってきたね。暖かくなると、父さんと行った渓流釣りを思い出すよ。
■愛好家らが調査
晴男 よく行ったな。イワナ、ヤマメ、アマゴ、ニジマスなどを夢中で追いかけ、ベストポジションを見つけると胸が高鳴ったもんだ。
のぼる 東京電力の福島第1原発事故が起きて、福島県の河川は大丈夫かな。セシウムなどの放射性物質で汚染されていないか心配だね。
晴男 一緒によくいった双葉郡の川内村。モリアオガエルの生息地で″カエルの詩人″、草野心平さんの「天山文庫」があることでも有名なところだ。
のぼる 覚えているよ。村の南北を木戸川がゆうゆうと流れていた。
晴男 その木戸川にいる渓流魚のセシウム濃度を、原発事故があった年から毎年、調査してきた釣りの愛好家たちがいる。「福島県で釣りを楽しむ会」というんだ。この会はまだ木戸川が禁漁区なので川内漁協の許可をもらって、川内村や川内村観光協会などが主催する「川内村放射性物質測定釣行会」に協力してきたんだ。
のぼる 川内村は原発の西30キロ圏内だから放射性セシウムの濃度も高いだろうな。
晴男 昨年は5月31日と6月1日に、木戸川とその支流でヤマメやイワナを約100匹採取して放射性セシウムの蓄積状況を大学の先生に調査してもらったんだ。
■なぜ支流の魚が
のぼる 多くの川が禁漁区で放射線のデータなどがないので調査は貴重
だね。
晴男 すべての魚から放射性セシウムが検出された。放射性セシウム濃度の平均値を比べると木戸川本流は1キログラム当たり46ベクレル、支流の戸渡川で120ベクレル、滑津川81ベクレル、富岡川80ベクレルだった。一般食品の基準値100ベクレルを超えた魚は支流の戸渡川に集中していた。
のぼる どうして支流の魚の汚染がひどかったのかな。
晴男 原発事故の初期に放射性セシウムが渓畔のコナラの樹や葉に多く沈着した。この集水域にいたヤマメとイワナの濃度も同様に高い傾向にあるんだよ。
のぼる 安全な自然をとりもどすためにも調査の継続が必要だね。
(しんぶん赤旗2015年2月28日付けより転載)