原子力規制委員会は、再稼働に反対する多数の世論に反して、関西電力高浜原発3、4号機(福井県高浜町)が新規制基準に適合したとする審査書を決定しました。しかし、国際原子力機関(IAEA)が多重防護の一環として求める、原発事故時の住民避難計画は「まだまだ不十分」(野瀬豊・高浜町長)なままです。原発が立地する半島の先の集落住民は、陸路では「原発の真横を通らないと(半島)外に出ていけない」、船も「待っている間に被ばくしてしまう」と不安です。
高浜原発から30キロ圏には、福井県民5万5000人、京都府民12万8000人が住んでおり、広域避難の計画は立地県外に及びます。
高浜原発の重大事故解析では、事故から19分後に炉心溶融が、90分後には原子炉圧力容器が壊れ、放射性物質が放出されます。しかし、昨年8月に実施された広域避難訓練は、これを度外視する内容で、大地震や津波、積雪などの複合災害も考慮されていません。
高浜原発から5〜30キロ圏住民に即時避難の指示が出るのは、大気中の放射線量が「1時間当たり500マイクロシーベルト以上」の基準を超えて観測された地域です。「通常の線量の1万倍とかにならないと、指示が出ないのか」との怒りの声が上がっています。
甲状腺被ばくを抑える安定ヨウ素剤は、5キロ圏には「混乱なく服用できるようにするため」として事前配布となりましたが、5〜30キロ圏は、避難指示が出た後です。服用前に内部被ばくする恐れが濃厚です。慢性疾患の薬を服用する患者が少なくない40歳以上も配布対象となったことで、服用薬と安定ヨウ素剤の相互作用に注意しながらの速やかな配布がいっそう求められます。
このほか、身体の放射能汚染を検査するスクリーニング場所が原発に近い問題点も指摘されており、避難計画の現状には、「被ばく計画だ」との批判の声が上がっています。こうした現状なのに、高浜原発3、4号機を動かすことなど許されません。
(福井県・山内巧)
(「しんぶん赤旗」2015年2月13日より転載)