経済産業省が、電源をどのように組み合わせて電力を賄うのか、エネルギーミックスの議論を本格化させました。原発の割合をどの程度にするかが焦点とされています。日本ではこれまで50基以上つくられた原発が、2011年3月の東京電力福島第1原発の重大事故後次々と停止し、1年半近くにわたって1基も動いていません。それでも昨年の冬も夏も、今年の冬も電力を賄えています。省エネの努力や太陽光や地熱など再生可能エネルギーの利用を進めれば、原発なしでも電力が賄えるのは明らかです。原発に固執し、推進する検討はやめるべきです。
原発事故への反省がない
経産省がエネルギーミックスの検討のため設置した有識者会議は、安定供給、効率性、環境への負荷、安全性の四つの観点(英語の頭文字をとって「3EプラスS」とよばれる)から検討し、30年時点に向けた火力や再生可能エネルギー、原発などの電源の割合を議論するとしています。経産省は、原発と再生可能エネルギーを合わせて50%程度にしたい意向ともいわれています。
安倍晋三政権は昨年4月に決めた「エネルギー基本計画」で、原発は「重要なベースロード電源」と位置づけ、今後も原発に固執し、原発に依存していく姿勢を打ち出しました。そのために原子力規制委員会の審査に合格した原発は再稼働させると、九州電力川内原発を手始めに、再稼働に向けた準備を推進しています。その一方、基本計画では原発依存度を「可能な限り低減させる」としているだけで数字を示していないため、経産省が有識者会議などを開いて検討を本格化させたものです。
「原発ゼロ」でも電力が賄えているのに、原発を再稼働し、長期にわたって依存していくのは道理がありません。だいたい東電福島第1原発の重大事故は発生から4年近くたっても収束しておらず、福島県ではいまだに12万人が避難生活を強いられているのに、原発推進を強行するのは被災者と国民の気持ちを逆なでするものです。福島原発では、溶け落ちた核燃料を取り出す作業も、放射性物質で汚染された汚染水を処理する作業も大幅に遅れています。事故を無視して原発に固執し、推進するのは言語道断です。
長期に原発に依存する目標を示せば、現在停止中の原発を再稼働するだけでなく、原発の新設や増設にも道を開く危険があります。実際、経産省は昨年末まとめた原子力小委員会の「中間整理」で、廃止される原発もあるので、「新増設・リプレース(建て替え)の具体的容量」についても検討する必要があると盛り込みました。低減どころか原発依存を拡大する策動はただちにやめるべきです。
国民の安全こそ国富
安倍首相は国会で原発問題を質問されるたびに、原発が停止しているため「燃料輸入増で毎日100億円の国富が海外に流出している」などの答弁を繰り返しています。しかし、原発がいったん事故を起こせば、国土と国民に甚大な被害を及ぼすことは明らかです。
関西電力大飯原発の運転再開を差し止めた昨年5月の福井地裁判決は、豊かな国土に国民が生活できることこそが国富だと指摘しました。「原発ゼロ」の実現こそ、その国富を豊かにする道です。
(「しんぶん赤旗」2015年1月31日より転載)