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“福島に生きる”「4重苦」に立ち向かう・・山地酪農家 米倉啓示さん(66)直美さん(66)夫妻

豊かな自然の中に放牧されていた牛たちの群れ
豊かな自然の中に放牧されていた牛たちの群れ

 福島原発事故避難者訴訟原告の米倉啓示さん(66)、直美さん(66)夫妻は、福島県郡山市の借り上げ住宅で避難生活を送っています。川俣町山木屋で、山に牛を放牧し、シバ主体の自然草で育てる山地(やまち)酪農を目指してきました。

 ロボットを造る会社で技術者として働いていた啓示さん。脱サラして、故郷の山木屋で酪農を始めるために1977年から1年間、スイスでアルペン酪農を実習。帰国後、農薬などを使わず「本来の牛乳を作ろう」と、国の事業として作られた山木屋の畜産基地に入植しました。

■30年かけ牛育成

 米倉夫妻は、雑草を一本一本抜いて山地を開墾して牛6頭から始めました。それから30年かけて放牧に適した牛をつくりました。

 「ようやく山地酪農らしくなってきた矢先の原発事故。人生をかけて築きあげてきたものすべてを放射能汚染によって破壊されてしまいました」

 牧場の土を海外で調べてもらうと1平方メートルあたり136万ベクレルもありました。「農業には適さない」との結果でした。

 「3・11までは、日が昇り、日が沈むまでの1日10時間を超える作業。直美さんは言います。

 「忙しい毎日でしたが、春から秋へと季節の変化を肌で感じながら放牧の牛たちがおいしそうに青草を食べている姿を見るのが何よりも好きでした」

 標高650メートル、総面積30ヘクタールの大地。吾妻・安達太良連峰から、遠く蔵王連峰までパノラマで見渡せるすばらしい場所でした。

 「夕焼けから満天の星に移り変わる至極の時間は、やり遂げた労働の充実感を満たすひと時で、ジーンと来ました」

 夫妻は「4重苦を受けている」と話します。地震による被害。放射能による被害。何もしてくれない行政による被害。そして、証拠調べにもいまだに入らず、現場検証の実施も決定せずに遅々として進まない裁判・・。

米倉直美さん
米倉直美さん

■唯一無二の故郷

 直美さんは、「国破れて山河あり。山河が残ってもそこに心の通う人々がいなければ故郷ではありません」と怒ります。

 山木屋の現状は、とてつもない数の放射性廃棄物の入った黒いフレコンバックが地域の一等農地に積み上げられ、不気味な様相です。

 人類と原発は共存できない」と考える米倉夫妻は「福島の反省もなく、原発の再稼働や青森県の大間での原発建設の推進など絶対に許すことはできません。負の遺産を未来に引き渡すとはできません」と、安倍内閣の暴走に抗議します。

 「これ以上、地球を汚してはいけない」と考える夫妻は、避難者訴訟原告に加わりました。

 夫妻は口をそろえます。「命を育むことの一番は食の安全を確保すること。故郷は世界中どこにも取って代わることのできない唯一無二の場所。理不尽に奪ったものを許すわけにはいきません」

(菅野尚夫)

(「しんぶん赤旗」2015年1月12日より転載)

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