【リマ=島田峰隆】南米ペルーのリマで開かれていた国連気候変動枠組み条約第20回締約国会議(COP20)は12月14日未明、議長を務めるペルーのビダル環境相がまとめた合意文書案を採択して閉幕しました。当初日程より丸1日以上遅れての閉幕となりました。
ビダル議長は合意文書を「気候変動に対する行動のリマからの呼び掛け」とすることを提案し、「みなさんの仕事、気持ち、感情の文書だ」と語りました。
今会議では、来年末にパリで合意を目指す2020年以降の温室効果ガス削減の新しい国際協定に盛り込む項目や、新協定に向けて来年3月までに各国が提出する国別目標案の中身などが議題になりました。大枠とはいえ、国別目標案の中身とパリ合意の土台となる文書に合意できたことは新協定への一歩となりました。
合意文書は、国別目標案の提出時期について、準備のある国は来年3月までとしました。目標案の中身では、削減の基準となる年や実施期間のほか、なぜその目標が野心的だと考えられるのかなどについての説明も求めました。途上国側の要求に配慮し、地球温暖化の被害軽減策を各国が目標案に盛り込むことを呼び掛けました。
また途上国側が強く求めていた「共通だが差異ある責任」の原則を明記し、先進国による資金援助にも触れています。
新しい国際協定に盛り込む項目については、対立する論点に関して各国のさまざまな提案を併記したテキストを付属文書として添付しています。
COP20閉幕・・日本はいつまで「化石賞」か
地球温暖化対策の新たな枠組みについて協議するためペルーのリマで開かれていた国連の気候変動枠組み条約第20回締約国会議(COP20)は、各国が削減目標に盛り込む項目などについての協議は難航したものの、最終的には議長の提案を受け入れ閉幕しました。来年末のCOP21に向け、協議を加速するものです。浮き彫りになったのは、温室効果ガスの削減目標を示す見通しさえ明らかにできない日本政府の消極姿勢です。日本は今回も国際NGOから、対策に後ろ向きだと「化石賞」を贈られました。日本はいったいいつまで「化石」を続けるつもりか。
「2度以内」達成目指して
二酸化炭素など温室効果ガスの排出が原因となる地球の温暖化は、激しい気候変動を引き起こし生態系そのものも破壊するもので、いまや対策に待ったが許されない状態です。温暖化を抑えるには産業革命以降の平均気温の上昇を2度以内とすることが求められています。国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は11月に発表した第5次統合報告書で、現在のペースで温室効果ガスの排出が続けば21世紀末の平均気温は最大4・8度上昇すると指摘しました。今回のCOP20の冒頭で潘(パン)基文(ギムン)国連事務総長が指摘したように、目標を「達成できる機会が急速に小さくなっている」ことを直視する必要があります。
COP20で協議されたのは、2020年以降の温暖化対策の国際的な枠組みです。これまでの京都議定書の枠組みでは先進国と途上国は「共通だが差異ある責任を負う」とされ、途上国には削減義務がありませんでした。アメリカも協定を批准しませんでした。新しい枠組みでは先進国も途上国も削減を求められます。COP20を踏まえ、各国は来年春までに自主的な削減目標を提示し、年末のCOP21での合意を目指します。
欧州連合(EU)が2030年までに1990年比40%削減の目標を掲げたのに続き、世界1、2位の温室効果ガス排出国であるアメリカと中国も、相次いで削減目標を示しています。今回のCOP20では先進国の目標に途上国への資金援助を盛り込むかなどで協議は難航しましたが、対立を克服し、各国が取り組みを加速して、来年のCOP21での合意を成功させることが不可欠です。
世界第5位の温室効果ガス排出国でありながら、今回の会合でも「できるだけ早く」としかいわず、削減目標をいつまでに示すかさえ明言しなかった日本政府の責任は重大です。COP20の閣僚級会合に参加した望月義夫環境相が各国から早期提出を迫られたのは、日本の孤立ぶりを示すものです。
「原発ゼロ」は大前提で
日本政府が、原発の比率をどれぐらいにするかエネルギーミックスの見通しが確立していないことを削減目標が定まらない口実にしているのは通用しません。それは東京電力福島第1原発事故で放射性物質を漏れ出させ、環境を破壊してもなお原発に固執する政府の異常さを証明するだけです。
原発事故を反省するなら「原発ゼロ」は大前提です。そのうえで温室効果ガスを排出しない再生可能エネルギーを大胆に進め、全体として排出を削減することこそ日本政府の責任です。それができなければ孤立は深まる一方です。
(「しんぶん赤旗」2014年12月15日より転載)