東京電力福島第1原発事故の「吉田調書」報道をめぐり、朝日新聞社が記事を取り消した問題で、同社の第三者機関「報道と人権委員会」は11月12日、「内容に重大な誤りがあり、公正で正確な報道を目指す姿勢に欠けた」とする見解をまとめました。
同委員会は長谷部恭男早稲田大教授ら3人で構成。9月中旬から担当記者ら延べ26人の聞き取り調査を行うなどしました。
問題となったのは5月20日付朝刊の記事。独自入手した吉田昌郎元所長の聴取記録「吉田調書」などを基に、「所員の9割に当たる約650人が吉田氏の待機命令に違反し、福島第2原発に撤退していた」と報じました。しかし、同社は9月、「逃げ出したかのような印象を与える間違った表現」として記事を取り消しました。
同委員会は「調書を入手し、政府に公開を迫るという報道は高く評価できる」とした上で、「『所長命令に違反』したと評価できる事実は存在せず、裏付け取材もなされていない」と指摘しました。
記事では「よく考えれば2F(福島第2原発)に行った方がはるかに正しいと思った」との発言が割愛されており、「公正で正確な情報を提供する使命にもとる」と批判。「ストーリー仕立ての記述は取材記者の推測」と関連記事の問題点も挙げ、記事の取り消しは「妥当だった」としました。
(「しんぶん赤旗」2014年11月14日より転載)