鹿児島県の九州電力川内(せんだい)原発(薩摩川内市)の再稼働に反対する「原発ゼロをめざす県民の会」は4日、伊藤祐一郎県知事に対し、再稼働に同意しないよう求める6317人分の緊急署名を提出しました。知事が招集した11月5日からの臨時県議会前に提出しようと、2週間余りで集めたものです。
井上森雄筆頭代表委員は「川内原発の再稼働は、国が他の原発の審査を簡略化し、全国の原発再稼働の突破口となると危惧している。鹿児島だけの問題ではない」として「署名の重みを知事は受け止めてほしい」と要請しました。
「会」のメンバーらは「知事は宮沢洋一経産大臣と会談したが、なぜ急ぐのか。県民は十分な説明を望んでいる」「またたく間に再稼働に突き進んでいる。住民説明会以降、避難計画についてますます不安だ」「福島原発事故は収束していないことを認識しているのか」との声が次々と上がりました。
同日、県母親大会連絡会(上村さよ子会長)も、再稼働に反対し、自然エネルギーへの転換などを求める申し入れをしました。
いずれにも日本共産党のまつざき真琴県議が同席しました。
「原発ゼロ」実現へ・・夏も冬も電力は賄えている
安倍晋三政権が発表したこの冬の電力需給見通しで、北海道から沖縄まですべての電力会社の管内で、この冬も電力は賄える見通しになったことが明らかになりました。安倍政権はこの見通しにもとづき、冬の節電要請には数値目標を示さないことを決めました。東京電力福島第1原発の事故から3年8カ月、国内にあるすべての原発は運転を停止しています。そのもとでも需要が集中したこの夏の電力は賄えました。それに続き、冬場も電力の需要が賄える見通しになったのは重要です。原発は停止したままで「原発ゼロ」に進む条件がいっそう広がっています。
予備率3%を確保できる
電力需給見通しは、夏と冬の2回、経済産業省で第三者などが参加して取りまとめたうえ、閣僚が参加する電力需給の検討会合で決定するものです。先月末発表されたこの冬の対策によれば、これまでと同じような厳冬になっても、企業や家庭での節電などを織り込めば、すべての電力会社の管内で、電力の安定供給に最低限必要な需要と供給の予備率は3%以上を確保できるとしています。原発はすべて停止している前提です。原発依存度が高い関西電力と九州電力の予備率は3%ですが、北海道電力の予備率は11・4%、東京電力は7・9%などとなっています。
これを受け、政府はこの冬の電力需給対策として全国的な節電の数値目標は設けず、寒さが厳しい北海道についてだけ、万一の場合にそなえて、「計画停電回避緊急プログラム」などを準備するとしています。数値目標は示されなくても節電は必要ですが、原発が停止していても、この冬も電力が賄える見通しなのは明らかです。
政府はこの夏の電力需給見通しで、関西電力や九州電力の予備率は3%を下回るという見通しを示し、東日本から西日本への電力融通をおこなわなければ、電力が不足すると危機感をあおりました。全国の電力会社のトップを切って、九州電力の川内(せんだい)原発(鹿児島県)を再稼働させようと、原子力規制委員会の審査を急がせたのもそのためです。結果的に川内原発の再稼働は夏場に間に合わず、現在も運転を開始していません。しかし、九州電力を含め全国どこでも、この夏の電力不足は起きませんでした。九州電力の、この夏最も電力需要が多かった日でさえ、予備率は12・7%に達しています。
政府はこの夏の見通しが外れたのは、猛暑でなかったためなどと説明します。確かに電力需要は気温などに左右されますが、政府がやるべきなのは危険な原発の再稼働の押し付けではなく、節電の呼びかけや安定したエネルギー源の確保のはずです。電力不足をあおって原発の再稼働を押し付けるやり方は、すでに破綻しています。
川内原発など再稼働せず
安倍政権と電力会社は、この夏に間に合わなかった川内原発の再稼働を急いでいますが、火山噴火などへの対策も、住民のまともな避難計画もなく、不安と反対はつのる一方です。現地入りした宮沢洋一経済産業相が、住民の声をまともに聞かず、県と立地自治体だけの同意でことをすすめようとしていることに反発は必至です。
この夏も冬も電力が賄えていることを認め、原発再稼働の強行はやめるべきです。不必要な原発の運転は危険性を高めるだけです。
県東京事務所に市民の会も要望
原子力規制を監視する市民の会は11月4日、「川内原発再稼働への『地元同意』を絶対に強行しないでください」とする伊藤祐一郎鹿児島県知事あての要望書を、同県東京事務所に提出しました。
要望書は、知事が7日の臨時県議会で「同意」を強行しようとしていることに抗議。再稼働は「様々な観点から到底あり得ない」としています。
要望書は①原発への火山噴火対策②避難計画の違法性③「被害地元」となる可能性が極めて高い30キロ圏内の自治体に、再稼働への同意権が与えられるべきだと指摘。いちき串木野市、日置市、姶良(あいら)市で住民過半数に及ぶ再稼働に反対する署名や意見書が採択されていることに触れ「知事はこうした声を今こそ真摯(しんし)に受け止めるべきです」と主張。「『同意』強行は、住民の命を守るべき自治体の責務を放棄したも同然であり、知事としての資格そのものを疑われるべき事態です」と批判しています。
(「しんぶん赤旗」2014年11月5日より転載)