九州電力川内(せんだい)原発の再稼働の「条件」とされる「地元同意」手続きがすすめられています。県内5市町で開かれた住民説明会の参加者からは、「ますます不安」との声が。住民が不安を募らせる三つの問題を専門家に聞きました。
(原田浩一朗、鹿児島県・園山絵理)
Q・・火山噴火のリスクは小さい?
A・・十分な余裕を持っての予知など不可能
御嶽山(おんたけさん)の噴火災害直後でもあり、「日本全土に被害をもたらすような巨大噴火への対策はどうなっているか」と火山噴火についての質問が相次ぎました。
規制庁は、過去に、川内原発敷地内に火砕流が到達したことを認めつつ、「川内原発の運転期間中に、火砕流が到達するような巨大噴火が起きる可能性は十分小さい」と断定。「火山活動の監視を継続し、変化が生じたら原子炉運転を止め、核燃料を安全な場所に移す」と説明しました。核燃料の移送には「数年単位でかかる」と規制庁は認めています。
鹿児島大学の井村隆介准教授(火山学)はこう指摘します。
「巨大噴火を人類が科学的にとらえたことはありません。
『マグマだまり』さえ、誰も見たことがない。なんらかの前兆はとらえられても、対策に十分な時間的余裕があるかは全然わからない。仮に数力月前に『予知』できたとしても、間に合わず、意味がない」
Q・・想定する地震の揺れを大幅に引き上げた?
A・・2倍以上の揺れの危険を確率が小さいと無視
規制庁は、「想定する地震の最大の揺れ(基準地震動)を、540ガルから620ガルに大幅に引き上げた」と説明しました。
原子力安全基盤機構(JNES、2014年3月から規制庁に統合)は、マグニチュード(M)6・5の地震の震源近くで、1340ガルの地震動かおきる可能性を指摘しています。住民からは「620ガルの想定は小さすぎるのではないか」との質問が出ました。
1340ガルは620ガルの2倍以上。九電がこれ以上の地震動では炉心溶融事故が起きると認める、1号機の1004ガル、2号機の1020ガルを大きく上回ります。
規制庁は、「大きな地震は起きる確率が小さく、小さな地震は起きる確率が大きい。JNESの研究は確率論的な見地からのものであり、川内原発においては620ガルを想定すれば十分と判断した」と笞えました。
長沢啓行・大阪府立大学名誉教授(生産管理システム)は批判します。
「『確率が小さいから、考慮しなくていい』という弁解は、東日本大震災の前に『高さ15・7メートルの津波が来る可能性がある』という社内土木調査グループの試算結果を無視した東京電力幹部の言い分そのもの。M6・5というのは″どこでも起こりうる、ありふれた規模の地震″です。07年の新潟県中越沖地震では、M6・8で1699ガルを経験しています。620ガルで十分とした根拠が揺らいでいるのです」
Q・・世界最高水準の規制基準をクリア?
A・・コアキャッチャーとは似ても似つかぬ非常識な対策
安倍首相も規制庁も「日本の新規制基準は世界で最も厳しい」と誇ります。
住民からは、「ヨーロッパの新しい原発では、核燃料が溶融(メルトダウン)したさいに、安全に受けとめるコアキャッチャーが装備されていると聞く。コアキャッチャーは装備しないのか」との質問が出ました。
規制庁は「コアキャッチャーと同等の安全性を確保することを確認した」と答え、緊急時には、圧力容器の上から水をスプレーし、それが格納容器の下部にたまって、水深1・5メートルのプールができ、溶け落ちた核燃料を受けとめて冷やす、と説明しました。
元燃焼炉設計技術者の中西正之氏はこう指摘します。
「コアキャッチャーとは、約2800度という高温に耐えられる特殊な耐火レンガ製の装置です。溶融した核燃料に限らず、鉄や銅などの高温の溶融物が大量の水と接触すると水蒸気爆発の危険があり、その対策は高温溶融炉設計の常識です。水を張って溶け落ちた燃料を受け止めるなど、とんでもない」
(「しんぶん赤旗」2014年10月29日より転載)