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石炭火力発電売り込み 世界に逆行 安倍政権(上)・・地球温暖化に深刻な影響

アメリカ・ワイオミング州の石炭火力発電所(ロイター)
アメリカ・ワイオミング州の石炭火力発電所(ロイター)

 安倍晋三政権が温室効果ガスを大量に排出する石炭火力発電を世界に売り込んでいます。欧米が撤退へとカジを切るなか、安倍政権の異常さが際立っています。

(佐久間亮)

 

 IHI(旧石川島播磨重工業)は9月、マレーシアのヌグリ・スンビラン州で建設予定の石炭発電について、設計・調達・建設の請負契約を結んだと発表しました。事業実施者は、同国政府が100%出資するファンドと三井物産が共同で立ち上げた事業会社です。総事業費33億ドル(約3600億円)、最大容量200万キロワット。世界最大級の石炭発電です。

■トップセールス

 安倍首相は2013年12月の同国ナジブ首相との会談で、「石炭発電など日本の技術を活用してほしい」と要請。今年5月の首脳会談では、ナジブ首相からエネルギー事業への日本企業のさらなる参画の期待を引き出していました。

 安倍政権は、「日本の強みのある技術」を海外に輸出することで日本経済を成長させるとし、トップセールスで日本の多国籍企業の製品を売り込んでいます。石炭発電もその柱の一つです。

 4月に決定した「エネルギー基本計画」でも、石炭発電を原発と並ぶ安く安定的な「重要なベースロード電源」と規定。従来型に比べ温室効果ガスの排出量が少ない高効率石炭発電を海外に売り込むことを盛り込みました。

 最新式の石炭発電でも、温室効果ガスの排出量は天然ガス火力発電の約2倍です。石炭発電の増設は地球温暖化に深刻な影響を与えます。

■融資中止の国も

 オバマ米大統領は13年6月に発表した気候行動計画で、例外をのぞき海外の石炭発電建設への米国の公的融資を中止すること、世界銀行など他の国際開発金融機関に対しても早急に類似の対応をとるよう求めることを表明しました。その3週間後、米国輸出入銀行はベトナムのタイビン第2石炭発電への融資を見送りました。他方、日本の国際協力銀行は融資を決めました。

 米国はその後、北欧5力国(デンマーク、フィンランド、ノルウェー、スウェーデン、アイスランド)と石炭発電新設に融資しないことを盛り込んだ共同声明を発表。世界銀行も石炭発電への融資を原則停止し、「各国が石炭発電に代わる方法を見いだすための手助けをする」との方針を策定しました。欧州投資銀行、欧州復興開発銀行も同様の方針を策定しています。

 「FOEJapan」「気候ネットワーク」など国内外の非政府組織(NGO)31団体は今年4月、オバマ氏来日に合わせて安倍首相に対する公開書簡を発表しました。書簡は、高効率であっても石炭発電を新たに建設する余地は残っていないとし、石炭発電への融資停止をオバマ氏と議論するよう求めました。

 こうした世界の流れに逆らい、安倍政権は石炭発電に固執する動きを強めています。9月のスリランカ訪問でのラージャパクサ大統領との会談では、同国への石炭発電輸出の可能性を模索すると表明。1月のモザンビークのゲブーザ大統領との会談、3月のベトナムのサン国家主席との会談でも、両国での石炭発電導入に協力を約束しています。

 ほかに、今年だけでインド、オーストラリア、チリ、バングラデシュ、メキシコの各国首脳との会談で、石炭発電の重要性を共同声明に盛り込むなどしています。

(つづく)

(3回連載の予定です)

(「しんぶん赤旗」2014年10月2日より転載)

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