「来年から医療費がかかるようになれば、どうすればよいか」・・。岩手県釜石市・上中島仮設住宅の佐々木トシさん(81)は、同県で被災者への医療費の窓口負担(自己負担)免除が、今年12月で打ち切られることを心配します。
国が支援縮小
被災者に対する医療費は震災当初、国の全額負担で無料とされました。しかし、支援は縮小され、岩手県では国保加入者、後期高齢者(75歳以上)に限り、自治体が窓口負担のうち2割を負担すれば、国が残り8割を補助し自己負担分を免除しています。1年ごとに免除が継続されてきました。
一人暮らしの佐々木さんは2011年5月に仮設住宅入居後、いろんな薬を飲むようになったと言います。腎臓の悪い佐々木さんは薬が手放せません。「それでも年に1回は発熱や下痢などの症状が出ます。急に病院で診てもらうことも考えれば免除は続けてほしい」と話します。
同県大船渡市・ろくろ石仮設住宅で夫(65)と2人、年金で暮らす菊池みゆきさん(58)。糖尿病や高血圧、高脂血症などを抑える薬を飲んでいます。「半年に1度、医療費の明細が届きますが、かなりの高額。災害公営住宅に入れば、家賃も含めて負担はさらに重くなる。医療費の免除ぐらいは何とか切らないでほしい」
昨年3月、窓口負担免除が打ち切られた宮城県では、その後、必要な医療が受けられない受診抑制が進み、免除再開を求める声が広がりました。
6割納得せす
今年4月から住民税の非課税世帯など対象を絞った形で免除が復活しましたが、同県保険医協会が県内仮設住宅入居者を対象に行ったアンケートでは、6割以上が限定的な免除に納得していません。「土地を売却したら課税対象になり、7月から免除が終了した」
「家族に就業者がいて免除の対象にならなかった」など、免除条件に不満の声が多く寄せられました。
ろくろ石仮設住宅内の、ろくろ石地域公民館・村上誠需館長は、「復興はまだまだです。震災後1年で打ち切られた社会保険の方も含め窓口負担免除を継続・拡充し、被災者を励ましてほしい」と要望します。
被災者へのアンケートは岩手県保険医協会でも取り組まれています。同保険医協会・事務局の伊藤大さんは、「免除制度は『大変助かっている』『切れたら大変』などと継続を望む声が多数寄せられています。各市町村への陳情や国会要請行動等を通じて、継続を求めていきたい」と話しています。
(つづく)
(「しんぶん赤旗」2014年9月12日より転載)