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“福島に生きる” 事故の記録 詩で語り継ぐ・・あらお しゅんすけさん(72)

二本松市・『安達太良のあおい空』出版

 安心して 空気を吸って/安心して 食べ物を食べて/安心して 子育てをして/安心して眠る/二〇一一年に 気がつきました/それが どんなに幸せなことだったのか

■国と東電を告発

詩集『安達太良のあおい空』を出版したあらおさん
詩集『安達太良のあおい空』を出版したあらおさん

 福島県二本松市に住む、あらお しゅんすけさん(72)の詩です。詩集『安達太良(あだたら)のあおい空』を出版(山猫軒書房)。「客観的にどういうことが起きたのか伝えたかった」と、硬質な言葉で原発事故を起こした国と東京電力を告発しています。

 日本自費出版文化賞部門賞を9月3日、受賞しました。自費出版に光をあて功績をたたえることを目的に、日本グラフィックサービス工業会に属する中小印刷会社が設立した日本自費出版ネットワークが設けたものです。

 「学習」と題する詩の一節では「掴(つか)んでいる情報もリスクも開示せず/なすすべも無い 事業者と国/『直ちに健康に影響はない』と くりかえす国/村民まるごと 一ケ月も 平気で被曝(ばく)させる国」と、国と東電を断罪しています。

 あらおさんは群馬県生まれ。岩手大学農学部獣医学科を卒業。乳業メーカー、福島の農業団体で勤務獣医技術者として酪農に携わってきました。

 「にわか詩人」を自称、「3・11」の前には詩を書いたことはありませんでした。原発事故を体験して「福島の記録」を残す必要性を痛感、「長い文章よりも短く伝える詩」の方法が多くの人に伝わるのではないかと書き始めました。

 物言わぬ動物に代わって観察して病気の治療に当たる獣医師。その経験が「被災者の立場を思いやる想像力を働かせることができたかも」といいます。

 「国がらみの犯罪に黙っていられない」と生業(なりわい)を返せ、地域を返せ!福島原発訴訟の原告に加わりました。

 あらおさんの自宅室内の放射線量は今も毎時0・2マイクロシーベルト。近くを流れる川の河川敷は1マイクロシーベルト、自宅隣のやぶ地は0・64マイクロシーベルトあります。福島県中通りは今も低線量被ばくにさらされています。

 「安達太良山や阿武隈山地を望みながら小さな畑を耕したり、散歩したり、そんな穏やかな老後が続く」と思っていた人生が一変。「世の中、理不尽で、矛盾に満ちて、欲望にあふれている。見たくもないところを見てしまいました」と、「3・11」からの3年半を振り返ります。

■勇気をもらって

一方、「世の中、捨てたものではないなあということも発見した」といいます。「志を同にする人がたくさんいることに気づかされました。被災者に寄り添っている人と知り合えました。こうした出会いは、3・11後のこれからを生きる勇気をもらいました。人生が豊かになりました」と、感じています。

 「あだたら山 安達太良山よ 大いなる山よ 母なる山よ」とうたう、あらおさん。「第二の故郷」福島をこよなく愛しています。

 「福島の真実を被災者として命尽きるまで語り継いでいきます。収束などしていません。福島に足を運び自らの目で見てください」

(菅野尚夫)

(「しんぶん赤旗」201年9月12日より転載)

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