福島・長谷部 関連死が津波死者上回る
岩手・斉藤 住宅見通しなく我慢限界
宮城・横田 医療費免除なくされ悪化
東日本大震災と福島第1原発事故から9月11日で3年半になります。震災と原発事故は東北を中心に、関東も含め各地に大きな被害と影響をもたらしました。被災者の状況、復興の進捗は、各県、各地域によって異なります。特に被害の大きかった(北から)岩手・斉藤信、宮城・横田有史、福島・長谷部淳の日本共産党3県議に話し合ってもらいました。(司会は柴田善太・東日本総局長)
-いま、一番訴えたいことは何ですか。
今も不明者
横田 震災の被害規模を思い返してほしいと思います。宮城だけで関連死も含め1万496人が亡くなり、今も不明者が1271人います。住宅全壊8万2992棟、半壊15万5122棟です。今も仮設住宅に7万7000人が住んでいます。
しかも、3年半たって、災害公営住宅は計画の1万5561戸に対して、完成したのは1526戸、1割にすぎません。復旧復興は進んでいない。始まったばかりです。
斉藤 被災者は我慢の限界に達しています。
「よりそいホットライン」ノの2013年度の報告では相談のうち、被災3県では28%が自殺に関するもので、全国平均の約3倍になっています。山田町での民間調査では3割が抑うつ状態にあるとされています。
もうひとつは住宅確保に見通しがないこと。応急仮設住宅にピーク時の84%の世帯が住み続けています。3年半たっても仮設を出られた人は16%しかいない。
最大の障害
長谷部 いまだに12万5000人を超える県民が避難を強いられています。汚染水問題の解決のめどもたたない。それでも、事故収束宣言は撤回されず、福島第2原発の廃炉も決定されず、除染のあいまい化が進み、賠償も東電がいかに少なく済ませるかに終始しています。
これほど福島の困難な事態が続いているのに、国は原発の再稼働と輸出をしようとしています。福島県民の願いの実現の最大の障害が国の悪政です。「オール福島」の一致点(注1)を掲げ国に迫っていかなくてはいけない状況が3年半たっても続いています。
-3年半たって被災者の生活苦が増しているように思えるのですが、どうですか。
生活苦深刻
斉藤 被災者に二極化があり、自立再建ができる人がいる一方、多数の人の生活苦は深刻化しています。山田町の調査では7割の人が「生活が苦しい」と回答しています。先だって田野畑村で「復興市」を行いましたが150人が集まりました。物資は余っているという状況ではありません。
震災当初は、仮設住宅を早く出たいという人がほとんどでしたが、今は仮設で生活し続けたいという声が出ています。災害公営住宅に入ると家賃を払わなくてはいけない。家賃を払わなくてもいいなら劣悪な条件でも仮設がいいということです。
横田 宮城でも災害公営住宅入居希望者が急激に減りました。1地域で100人減ったという事例もでています。
あと、大事なのは医療の問題です。宮城県はひどくて、昨年度(2013年)、医療費免除を打ち切りました。気仙沼市では病院に行かなくなって重症化したがん患者をボランティアが発見して危ういところを助けた事例も出ています。今年度から国が10分の9・5負担で医療費免除を復活しましたが、県は一切支援しないため、被災者の2割しか免除対象になっていません。
一方で「東北メディカル・メガバンク構想」(注2)なるゲノム研究には復興予算を500億円もつぎ込む計画です。そんなお金があるなら医療費免除に回せというのが県民の声です。
斉藤 岩手県保険医協会アンケートの中間報告でも、医療費支援が打ち切られたら受診抑制するという人が50%にのぼっています。岩手県は医療費、介護保険利用料免除を続けています。これは被災者の命綱で、自立できるまで続ける必要がありますね。
全壊した陸前高田市、大槌町、山田町の3県立病院が再建されることになったのは党の県議が複数になったことと、住民運動の成果です。
長谷部 私はいわき市に住んでいます。いわき市は30万都市でありながら、もともと、医療過疎の市です。そこに2万4000人、一つの町ほどの被災者が避難しています。避難者の医療費は無料ですが、いわき市民は有料。住民に複雑な感情が生じ亀裂が入る。このことは今後の大きな課題だと思います。長引く避難でアルコール依存症が増え、自治体職員の15%がうつ病(県立医科大調査)という事態もあります。
福島で深刻なのは震災関連死が増え続けていることです。地震津波で亡くなったのは1603人。2013年11月に関連死が累計で1605人となり地震津波の死者を超えました。今年8月で関連死の累計は1753人になっています。内閣府の8月の資料では福島県の「東日本大震災に関連する自殺者数」は56人です。8月26日に福島地裁が避難者の自殺と原発事故との因果関係を認め、東電に賠償を命じました。福島では原発事故によって命が脅かされています。(つづく)
注1 「オール福島」の一致点 「みんなで新しい県政をつくる会」が多くの団体・個人と対話して、8月に発表した県民共通の願い。内容は①国は、事故収束宣言を撤回し、県内原発すべての廃炉を決断する②国と東電の加害責任を明確にし、徹底した除染と完全賠償を③地域の医療体制確立に国が全責任を果たす④一人ひとりに寄り添った長期の復興支援策を求める-というもの。
注2 東北メディカル・メガバンク 被災地を中心に健康調査と遺伝情報を集めた「バイオバンク」をつくり、次世代医療の研究、開発を推進する事業。岩手、宮城県で15万人規模の遺伝情報などを調査する計画。
(「しんぶん赤旗」2014年9月10日より転載)