東日本大震災から3年5カ月が過ぎても、生活を再建する支援が行きとどかず、より困難な状況に追い詰められる人たちがいます。被災者の自立支援をしている「ライフワークサポート響」の阿部泰幸さん(52)は「プレハブ仮設住宅以外の支援が行きとどいていない被災者からの相談が増えている」と話します。
(佐藤幸治)
今年に入り阿部さんが相談を受けた宮城県の52歳の女性は、狭い1部屋のアパートで3人の子どもと暮らしていました。長男は高校学費の滞納が続き、退学の瀬戸際でした。
女性は被災して間もなく、自営業の夫を残して都市部に仕事を探しに来ていました。震災で、夫に仕事が来なくなり、長女は友人4人を津波で亡くしてふさぎ込み、仕事に行けなくなるなど、生活が一変していました。
地震で自宅の古い土壁や天井が崩れ、家族5人では住める状態ではなくなったにもかかわらず、「一部損壊」の判定で被災者生活再建支援法の対象外。仮設住宅の入居も認められませんでした。
保護を受けられず
アパートを借りて仕事を探すも、子どもの相手をしながら働ける仕事に就けず、生活保護も、「どうしてもだめだったらもう一度来て」と申請を断られました。
当初1人で暮らしはじめた女性は、「地震が怖くて夜眠れずに過ごす日が続いた。家族よりも他人の方が震災のことを話せる」と、インターネットのコミュニティーサイト、いわゆる出会い系サイトを利用するようになりました。「書き込みに返事があることがうれしかった」といいます。
サイトで知り合い、近くに住んでいるという男性と交際するように。子どもの高校入学金を借り、給料を支払うという男性のもとで仕事を手伝うようになりました。
昨年、給料を受け取れなくなりましたが、男性からは仕事や身の回りの世話をするよう連絡が入り、メールを無視すると電話が鳴り、夜中でもアパートに押しかけてくることも。
相談を受け、事情を知った阿部さんは、高校に掛け合って長男の退学を回避し、男性からのストーカー行為について警察と弁護士に介入を依頼。女性の転居、生活保護申請をサポートしました。
マイナスから再建
女性は、「50歳もすぎて浅はかだったと思いますが、わずかにあった夫からの仕送りも途絶え、当面の生活費のことで頭がいっぱいだった。震災で自宅が壊れ、家族の仕事も無くなったのだから、被災者として支援してほしかった」と振り返ります。震災後疎遠になっていった夫とは、お互いの合意で離婚する予定です。
阿部さんは、「女性は被災してマイナスからの再建なのに、実情に合わない被災判定で支援を受けられず、自分で解決できないところまでいってしまった。仮設住宅でも、生活費を稼ぐために出会い系サイトを利用していたシングルマザーの相談を受けています」と被災者が置かれた現状を憂慮します。
(「しんぶん赤旗」2014年9月8日より転載)