福島第1原発の建屋周辺からくみ上げた汚染地下水を浄化設備で処理して海に流す計画について、東京電力は8月25日、福島市で開かれた福島県漁連の組合長会議で説明しました。東電は浄化設備の試験結果を示すなどして漁業者に計画への理解を求めましたが、出席者からは「絶対反対」「地下水ではなく汚染水なのでは」などと厳しい意見が相次ぎました。
県漁連の野崎哲会長は説明終了後、記者団に「(浄化すれば汚染水も海に流せるという)なし崩しの不安感もある」と述べました。組合員の意見を集約した上で、最終的に計画の是非を判断する方針だといいます。
計画で使う「サプドレン」と呼ばれる42本の井戸は、汚染源である建屋近くにあります。くみ上げで汚染水の発生を効果的に抑えられますが、放射性物質による汚染が上流の地下水よりも高い傾向にあります。
放出方針変えず
東電は、建屋周辺からくみ上げた地下水は放射性セシウムなどを低減させて海に放出するとしていますが、トリチウム(3重水素)など一部の放射性物質は除去できません。
海への放出基準は、建屋の上流側でくみ上げている地下水バイパス計画と同じ、トリチウム濃度が1リットル当たり1500ベクレル未満。地下水パイパス計画と同様に、基準を超える濃度の井戸の地下水も他の井戸の地下水と混ぜ、薄めた上で基準を下回れば放出する方針です。
東電は同日夜の会見で、漁協側から「認められない」と強い反発があったことを明らかにする一方、「説明して理解を得たい」とのべ、放出の方針は変えない姿勢を示しました。
志賀原発 申請内容に疑問・・規制委が審査会合
原子力規制委員会は8月26日、北陸電力志賀(しか)原発2号機(石川県志賀町)について、原発の新規制基準に適合しているかどうかを確認する初の審査会合を開きました。会合では、北陸電が申請内容の概要を説明。同じ沸騰水型の他の原発が重大事故の対策に盛り込んでいる「フィルター付きベント(排気)装置」を使わないことに疑問の声が出されました。
フィルター付きベンド装置は、事故時に格納容器の圧力を下げ、放射性物質の放出量を減らした上で外部に逃がす装置。しかし、北陸竃は2015年度をめどに設置する方針で、今回の申請には含めていません。
北陸電は、従来の格納容器からのベントの性能を向上させることで対応すると強調。しかし、規制委側は「規制要求では、放射性物の低減機能をつけることが明確になっている」と北陸電の対応を疑問視しました。
また、九州電力川内原発の申請書が約7500ページだったのに、志賀原発の申請書が約640ページであることに対し、規制委側から「十分に準備したのは本当か。なぜこんなに薄い申請書を出したのか。今までの議論を踏まえて検討してもらわないと、時間のロスになる」と指摘。規制委の更田(ふけた)豊志委員は「補正ありきの申請をされると非常に困る。注意してほしい」と述べました。
志賀原発では、重要施設直下などに活断層の疑いがある斯圖があり、規制委の専門家会合で検討が続けられています。規制委は、専門家会合の結論が得られるまで、一部の論点を除き実質的な審査に入らない方針です。
(「しんぶん赤旗」2014年8月27日より転載)