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政府、除染“骨抜き案”・・毎時0・23マイクロシーベルト目標「もともとなかった」/福島 自治体従わず

14-08-21hibaku 環境省が今月初めに発表した「個人の被ばく線量重視」「効果的除染」を掲げた「除染・復興の加速化に向けた中間報告」・・。報告は多くの市町村が目指している空間放射線量「毎時0・23マイクロシーベルト」は除染目標ではないと強調しています。その狙いはどこにあり、福島県ではどう受け止められたのでしょうか。

(柴田善太)

 

住民の理解得られず

 「政府としての除染の目標はもともとなかった」

 福島環境再生事務所(環境省の地方機関)の担当者は何度も強調しました。

 2011年11月に決定された放射性物質汚染対処特措法に基づく基本方針では、「長期的な目標として追加被ばく線量が年間1ミリシーベルト以下となること」(空間線量に換算すると毎時0・

23マイクロシーベルト)とされ、これまでこれが除染の目標とされてきました。

 環境省の今回の説明は、年間1ミリシーベルトは放射線防護の目標値で、除染だけでなくモニタリングや食品の安全管理など総合的に達成するものなので、除染そのものの目標ではないというのです。

 しかし、今も役所に置かれている環境省が12年10月に発効した問答形式の冊子『除染はどのように行われるのですか?』には、Q「除染には具体的な目標がありますか?」。A「長期的に年間1ミリシーベルト以下になることを目指します」とあります。

 環境省本省に問い合わせると「冊子をみると確かにそう(除染目標があるように)読めてしまいますね」という答えが返ってきました。

 福島市除染企画課の阿部和徳課長は、「原発事故が起こり放射能への知見も少ない中で、ともかく除染をしなくてはいけないので政府が提示した0・23を目標にした。しかも除染計画は環境省も認めた放射性物質汚染対処特措法に基づく法定計画だ。今になって除染の目標じゃなかったといわれても住民の理解は得られない」と話します。

 

個人線量はすりかえ

 

除染で出た廃棄物は、仮置き場が足りないため宅地保管されています=8月15日、福島市渡利地区
除染で出た廃棄物は、仮置き場が足りないため宅地保管されています=8月15日、福島市渡利地区

 もう一つの強訓点である個人被ばく線量の重視はどうか。

 福島市放射線健康管理室の笠原康稔次長は「個人被ばく線量の把握が重要なのは当然だが、それは健康管理の話で除染の話と絡められると困る。問題のすりかえだ」と指摘します。

 福島市の除染担当職員は、「報告」が「個人の被ばく線量を勘案した除染」を掲げていることについて、「個人線量は生活パターンによってみんな違う。同じ世帯でも違いが出る。住宅除染を誰の線量に合わせてやれというのか、全くイメージがわかない」と心配します。

 また、全住民の個入被ばく線量の把握は困難です。

 福島市は7月から、全住民28万7469人に手紙を郵送し、ガラスバッジ(個人線量計)での線量把握を呼びかけましたが、希望者は5万7360人(14日現在)にとどまっています。

 除染があいまいになれば、個人線量把握もできずに住民が被ばくするという事態も予測されます。

 さらに,「報告」は福島、郡山、相馬、伊達の4市の個人線量のデータから「空間線量が毎時0・3〜0・6マイクロシーベルト程度であれば、追加被ばく線量が目標の年間1ミリシーベルト程度になる」という事例を持ち出しています。これまで基準としてきた毎時0・23マイクロシーベルトを上回っても大丈夫というメッセージを送っているのです。

 これについては、相馬市の立谷秀清市長は「報告」を評価しつつ「われわれのデータだけで判断するのは危険。科学的な検証が必要だ」と指摘しています。

 

除染せよが住民の声

 結局、政府の「報告」の狙いはどこにあるのか。

 二本松市で「復興支援事業協同組合」を立ち上げ、地元業者による除染に取り組んでいる安斎一男専務理事(64)は、「住宅除染の進捗率を上げたいが、完了戸数である分子は容易に増えないから、基準を緩和し、対象戸数である分母を減らそうということ。もう一つはお金をかけたくないということ」と指摘します。

 安斎氏は「民間調査機関が将来にわたる福島県全体の除染で最大5兆円かかるという試算をしているが、それでも日本の1年の軍事費と同じ額。将来に禍根を残さないために、0・23マイクロシーベルト目標を堅持して除染をすべきだ」と強調します。

 福島市の住宅除染完了は約4割。8月下旬から除染が始まる南沢又地区の齋藤静夫さん(66)は、「僕らが0・23といったのでなく、政府がいった数値。ごまかさずちゃんと除染してよといいたい。本来は原発事故の前の元の姿に戻すのが政府の責任だから」と話します。

 除染目標をあいまいにしようとする今回の政府「報告」に対して、0・23マイクロシーベルトを目標としている県下の24市町村全てが、方針を変更しないとしています。福島市では、日本共産党市議団が「環境省は福島市の除染計画を尊重せよ」という意見書を6月議会で提案し可決されています。

 前出の安斎氏はいいます。

 「政府は除染骨抜きを狙ったが、空振りに終わった。放射能で汚染された福島をきちんと除染せよという住民の声の反映です」

 

政府中間報告の概要

▽個人の被ばく線量に着目

・個人の被ばく線量に着目した放射線防護の充実

・リスクコミュニケーションの充実

▽効果的な除染

・個人の被ばく線量を勘案した除染

・効率的な除染によるスピードアップ

▽除染から環境回復・復興へ

・環境回復・復興に向けた不安解消・放射線防護対策(除染以外)の総合的な推進

除染・・放射線被ばくを減らすために放射線に汚染された土などを取り除き、それを遮蔽(しゃへい)すること。

(「しんぶん赤旗」2014年8月21日より転載)

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