福島県川俣町は、東京電力福島第1原発事故による放射能汚染のため町面積の約3割の地域が避難を強いられるなど、深刻な状況に置かれています。事故から3年4カ月以上ですが、復旧・復興にはまだほど遠い状況です。
最も重視しているのは、避難指示を受けた山木屋地区の住民帰還に向けた見通しを示し、希望を実感できるようにすることです。国直轄で除染が進められ、住宅周辺はことし(2014年)8月末で終了予定です。農地を含めるとあと2年かかります。
政府は除染の長期目標として放射線の空間線量を年1ミリシーベルト、毎時0・23マイクロシーベルト以内に低減すると約束しました。長期とは10年ぐらいと理解してきました。今になって数十年などと目標をあいまいにするのでなく、堅持すべきです。
こんな長期に
2011年3月、私たちは必死の思いで、双葉町、浪江町からの避難者を受け入れました。同年4月には山木屋地区が避難指示区域となり、隣の飯舘村からの避難者も受け入れることになりました。避難指示地域がこんなに広がり、長期になるとは、憤まんやるかたない思いです。
除染で出た汚染土壌など廃棄物を管理する中間貯蔵施設の問題でも、時間がかかりすぎます。国として責任を持ち、自治体と住民の声を聞き、国の考えをしっかり示して十分に意見交換しながら進めることです。そうでないと原発問題は前に進みません。汚染水はこれからも出るし、事故収束はしていません。
国が主導性を
今後、帰還に向けた生活再建が課題になってきます。長期の避難で家族がバラバラになり、親だけが戻ると年金だけの暮らしになってしまう。帰還が決まったら支援打ち切り、あとは自力でといわれてもできない。戻るのをためらうことになります。被災者の生活再建に向けたきめ細かい対応が必要です。
除染、賠償、生活再建、健康管理など町は懸命に取り組んでいますが、もっと国が主導性を発揮すべきです。福島原発事故を引き起こした東電はもちろん、原子力政策を進めてきた国の責任は大きい。
大飯原発再稼働差し止めの福井地裁判決は、福島原発事故を司法の場でも真剣に受け止めた画期的内容です。福島の過酷事故を国民のものとし、二度と悲惨な経験をしなくてすむよう、国民的議論を進めるべきです。
聞き手・写真 福島県・野崎勇雄
(しんぶん「赤旗」2014年8月12日付けより転載)