東京電力は8月7日、福島第1原発の汚染水抑制策の一環として、1〜4号機原子炉建屋の周囲にある井戸から地下水をくみ上げ、海に放出する計画を検討していることを明らかにしました。放射性セシウムやストロンチウムの濃度が高い地下水を浄化して海に放出する計画であり、地元漁業関係者から反発が予想されます。
くみ上げるのは、建屋周囲にある「サブドレン」と呼ばれる井戸の水で、事故直後に飛散した放射性物質で汚染され、放射性セシウムやストロンチウムの濃度が高くなっています。東電は、護岸近くで別にくみ上げた水も含め、9月に工事を終える新設の浄化設備で放射性セシウムなどを取り除いて海に放出する計画です。
サブドレンは、事故前からある27本に加え15本を新設。くみ上げた一部の地下水からは1リットル当たり3000ベクレル近いセシウムや、同9万6000ベクレルのトリチウム(3重水素)などが検出されています。新設の浄化設備ではセシウムなどを同1ベクレル未満まで取り除けるとしていますが、トリチウムなど一部の放射性物質は残ります。東電は排水基準も検討します。
第1原発では、原子炉建屋などの地下に地下水が1日400トン流入。溶け落ちた核燃料などを冷やして地下にたまっている高濃度汚染水と混じり、汚染水増加の一因となっています。東電はサブドレンから地下水をくみ上げることで、流入量を200トン程度減らせるとみています。
東電は汚染水抑制策として、5月から原子炉建屋に流れ込む前の山側の井戸で地下水をくみ上げ、海に放出する地下水バイパスを実施。1カ所の井戸の地下水で基準を超えるトリチウムが検出されていますが、他の井戸の地下水と混ぜて、基準を下回ったからとして海に放出しています。2ヵ月以上たちますが、いまだに抑制の効果は現れていません。
1日27トンに・・氷投入増加
東京電力は8月7日、福島第1原発の2号機タービン建屋から海側に延びる地下トンネル(トレンチ)にたまっている高濃度放射能汚染水を取り除くため、建屋とトレンチの接合部分を凍結する工事が難航している問題で、凍結促進のために投入している氷の量を1日約15トンから1日約27トンに増やしたと発表しました。
東電によると、氷の本格投入は7月30日から始めているものの、「(トレンチ内の)上の方の温度の低下が鈍い」と説明し、量を増やしたといいます。ドライアイスも1日1トン投入したといいます。
トレンチにはタービン建屋から高濃度汚染水が流れ込んでいるとみられます。このため、建屋との接合部分のトレンチ内に凍結管を差し込み、周囲の汚染水を凍らせることで壁を造り、建屋からの流れを止める計画です。
4月末から凍結を始めていますが、十分凍らない状態が続いており、凍結を促進するために、これまで140トン近くの氷を投入しています。
唐突漁協は不信感
政府と東京電力は8月7日、福島県相馬市で相馬双葉漁協の会合に参加し、福島第1原発1〜4号機の原子炉建屋周囲にある井戸でくみ上げた地下水を浄化して海に流す計画について説明しました。終了後、佐藤弘行組会長は記者団に「次々にいろんな話が出てくる。これでは風評が収まらない」と述べ、唐突な提案に困惑した様子でした。
政府・東電は8日、いわき市漁協に説明。月内にも一般の組合員向けに説明会を開く方針です。
佐藤組合長は「地下水バイパスのときには、今回の話は出なかった。長期的な計画を説明すべきだ」と述べ、政府・東電への不信感も示しました。
(「しんぶん赤旗」2014年8月8日より転載)