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原発事故 東電元会長ら起訴相当・・検察審「津波への措置できた」

 東京電力福島第1原発事故をめぐり、業務上過失致死傷容疑で告訴・告発され、不起訴処分となった勝俣恒久元会長をはじめとする東電旧経営陣3人について、東京第5検察審査会は7月31日までに、起訴すべきだとする起訴相当の議決をしました。また、元常務1人について不起訴不当としました。議決は23日付。

 他に起訴相当とされたのは、武藤栄、武黒一郎両元副社長。今後、東京地検が再捜査し、改めて処分を決めます。再び不起訴となっても、起訴相当の3人については、検審が2回目の審査で起訴すべきだと議決すれば、検察官役の指定弁護士により強制起訴されます。

 検審は議決理由で、3人が福島第1原発に最大15メートル超の高さの津波が押し寄せる可能性があるとの報告を受けていたと指摘。勝俣元会長について「津波の影響を知りうる立場・状況にあり、当時の最高責任者として、各部署に適切な対応策を取らせることができた」と述べました。元副社長の2人についても、当時の立場を踏まえた上で、「適切な措置を指示し、結果を回避することができた」と判断しました。

 福島県民ら約1万4000人が参加する福島原発告訴団が2012年6月、勝俣元会長ら事故当時の東電経営陣ら33人を業務上過失致死傷容疑などで告訴・告発。東京地検は13年9月、他の市民団体などが告訴・告発した菅直人元首相ら政府関係者を含む計42人全員を不起訴処分としていました。

 

「知らぬ」ですまぬ 東電元幹部起訴相当・・「津波対策より経営優先」問う
検審議訣〝元会長発言信用できず〟

 

検察審査会の議決を受けて記者会見する告訴・告発人側の弁護士ら=7月31日午後、東京・霞が関の司法記者クラブ
検察審査会の議決を受けて記者会見する告訴・告発人側の弁護士ら=7月31日午後、東京・霞が関の司法記者クラブ

 東京電力福島第1原発事故をめぐり、検察審査会が東京電力の勝俣恒久元会長、武黒一郎、武藤栄両元副社長について起訴相当と議決したことは、電力会社が危険を予見・想定していながら、経営を優先し、対応を先送りしてきた責任を厳しく問うものとなりました。

 東電は、事故の5年前の2006年の時点で、福島第1原発が津波ですべての電源を失う可能性があることを認識していたことを、12年5月15日に認めています。

 東電によると、経済産業省原子力安全・保安院(当時)と原子力安全基盤機構は、04年のスマトラ島沖地震で発生した津波でインドの原発が被害を受けたため、06年に津波で原発の敷地に海水が浸水することについて勉強会を始めました。

 東電など電力会社もオブザーバーとして参加した勉強会では、福島第1原発の場合、津波が敷地に浸水すれば建屋内に海水が入り、非常用ディーゼル発電機などが水没し、機能を失うとの議論が行われました。保安院は東電に対し、このことを上層部に伝えるよう指示していましたが、当時副社長で原子力・立地本部長だった武黒氏どまりになっていたといいます。

 勝俣氏は国会事故調査委員会の事情聴取(12年5月14日)に「知っていれば対策をとっていた」などとみずからの責任を否定しましたが、検審の議決は「そのまま信用することはできない」と指摘しました。

 11年12月26日に公表された福島第1原発事故に関する政府の「事故調査・検証委員会」の中間報告の「事故の未然防止、被害の拡大防止」のところには、武黒、武藤両氏が登場します。

 同報告によると、東電は08年5~6月、国の地震調査研究推進本部が公表した02年の見解にもとづき、福島沖で明治三陸沖地震(1896年)が起きたという仮定で試算。同原発付近の津波は最高15・7メートルに達すると予測しました。

 担当者は同年7月31日ごろ、防潮堤で津波の遡上(そじょう)水位を1~2メートル程度まで低減できるが、数百億円規模の費用と約4年の時間が必要と説明。説明を受けた原子力・立地本部副本部長だった武藤氏らは「仮定の上の試算であり、そのような津波は実際には来ない」として対策を見送りました。決定は8月までに武黒氏に報告され、追認されました。

 武黒、武藤両氏は、津波対策を見送った当事者でした。

 

起訴相当

 不起訴処分に対し、検察審査会の審査員11人のうち8人以上が起訴すべきだと判断すれば、「起訴相当」と議決され、検察は再捜査して原則3カ月以内に起訴か不起訴を決めます。

 検察が再度不起訴にした場合は、同じ審査会2回目の審査を行い、再び8人以上が起訴すべきだと判断すれば、「起訴議決」となって対象者は強制的に起訴されます

 

「住民の思い伝わった」

 検察審査会が出した東電旧経営陣の起訴相当議決を受け、被災者からは7月31日、「住民の思いが伝わった」「意義深い判断」などと評価する声が上がりました。

 「以前から事故を起こした幹部の責任が問われないのはおかしいと思っていた」。原発から18キロ離れた福島県楢葉町の坂本要さん(61)は「一歩前進と評価できる」と話しました。

 

31日に公表された東京第5検察審査会の議決要旨は次の通り

 検察審査会議決(要旨)

【注意義務】

 原発は一度事故が起きると被害は甚大で、影響は極めて長期に及ぶため、原発を事業とする会社の取締役らは、安全性の確保のために極めて高度な注意義務を負っている。

【津波】

 東電は、10メートルを超える津波が襲来する確率は、1万年に1度から10万年に1度との試算を得ていた。これは耐震審査役計指針の「発生する可能性があると想定することが適切な津波」というべきである。東電は、容易に無視できないことを認識しつつ、何とか採用を回避したいというもくろみがあったと言わざるを得ない。原発事業者として、対応をとることが必要だった。

【浸水】

 東電は、敷地レベルを超える津波が襲来した場合、全電源喪失、炉心損壊にいたる危険性を認識することができたし、実際に起きた事故の教訓からも、溢水(いっすい)対策が必要であることは認識できていた。

【結果回避可能性】

 電源車や電源盤を搭載した自動車、必要な機材などを高台に移設し、緊急時のマニュアルの整備や訓練などもやっておけば、被害を回避し、少なくとも軽減することができた。

【規制当局の対応】

 原発は大丈夫だろうというような曖昧模糊(あいまいもこ)とした雰囲気が存在していたのではないか。規制当局と事業者の態度は、一般常識からもずれている。安全神話の中にいたからといって、責任を免れることはできない。

【被疑者らの責任】

 勝俣恒久元会長は、福島第1原発で、従来の想定を大きく超える津波が襲来する可能性に関する報告に接していると考えられ、適切な対応策を取らせることも可能な地位にあった。重要な点について知らなかったと供述しているが、借用することはできない。

(「しんぶん赤旗」2014年8月1日より転載)

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