東京電力福島第1原発事故で発生した放射性物質を含む指定廃棄物の最終処分場建設をめぐり、環境省の井上信治副大臣は7月30日、栃木県の候補地として塩谷町の国有地を選定したことを見形和久町長に伝えました。井上副大臣は同日、町役場を訪れて見形町長と会談し、詳細な現地調査の開始に理解を求めました。これに対し、見形町長は「残念でならない」と述べ、建設に反対する意向を示しました。
会談で井上副大臣は、同町を候補地に選定した理由について「生活空間や水源との距離などを総合評価した結果、塩谷町が最高得点となった」と説明しました。
これに対し、見形町長は町の「尚仁沢湧水」が同省の名水百選に選ばれている事実を挙げ、「こういったことは全く視野に入っていないのか」と評価方法に疑問を呈しました。
会談には、福田富一県知事、町議会の正副議長らも同席。橋本巌副議長(日本共産党)が「候補地が国有地であることを理由に自由勝手に調査を開始できるのか」と質問。井上副大臣は「住民の合意がなければ調査はできない」と答えました。
役場周辺には、住民ら約250人が集まり、抗議行動を行いました。柿沼満さんは「塩谷町の町民は、生活も仕事も豊かな自然と共存している。塩谷町に共存を壊す最終処分場は必要ない」と話しました。
候補地は、世界遺産の東照宮がある日光市に隣接した山間部。上部には町営牧場があり、下部には農業・飲料用の多目的ダムがあります。
環境省は、栃木と宮城、茨城、群馬、千葉の計5県で指定廃棄物の最終処分場を建設する方針。候補地の提示は、宮城県に次ぎ2県目となります。
核ゴミ容器の耐久1000年・・反対住民に政府側が説明
原発の使用済み核燃料など核のゴミを廃棄する最終処分場を安倍政権が絞り込もうとしている問題について、誘致に反対する北海道の市民団体と超党派の地方議員たちが7月29日、国会で経産省資源エネルギー庁など担当省庁と意見交換をしました。
最終処分場を受け入れる自治体はなく、核ゴミは処分のめどが立っていません。このため安倍政権は政府主導で場所を選定すると「エネルギー基本計画」(4月)に明記。今年1月には、自民党資源・エネルギー戦略調査会の会合で、北海道の根釧地域を含めた3地域を、火山学の専門家が「適地」として挙げるなど、事態が急展開しています。
最終処分地の立地選定について、地層処分を進める原子力発電環境整備機構(NUMO)の担当者は「これから決める」と回答。資源エネ庁の担当者も「政府としてまだ検討したことはない」と述べつつ、たとえ政府が″有望地″を示したとしても、地元の合意がなければ進めない、と答えました。
地層処分は数万年単位の管理が必要。しかし、核ゴミを入れる容器の耐久性に関して、NUMO担当者は「1000年持つ設計にしている」と説明。わずか千年で放射能が漏れ出す可能性を認めました。
意見交換を主催したのは、「ベクレルフリー北海道」、[地方自治を考える市民の会]、「核廃棄物施設の誘致に反対する道北連絡協議会」。道北連絡協議会の代表委員を務める鷲見(すみ)悟・日本共産党幌延町議と紙智子日本共産党参院議員、福島みずほ社民党参院議員も参加しました。
(「しんぶん赤旗」2014年7月31日より転載)