東日本大震災で自宅や家財を失った被災者は、どうやって家を再建するのか、重い負担に頭を悩ませています。自治体も国の制度に上乗せする形で再建支援をしています。しかし、自治体によって支援の差があり、国の支援制度の根本的な拡充を求める声が上がっています。
(佐藤幸治)
自宅が津波に流された宮城県石巻市の板垣哲子さん(61)は、津波がきた自宅付近に行くと「今でも動悸(どうき)がする」といいます。
当初、災害公営住宅に入居することも考えましたが、看講師をしている板垣さんの収入だと家賃は6万円を超えます。7年前に亡くなった夫の墓のこともあり、迷った末に規模を小さくして元の場所で家を建て直すことを決めました。
「負担を楽に」
板垣さんはいいます。「津波のきた場所
に戻るのは苦渋の選択。再建のローン は貯蓄もつぎこんで払える金額ギリギリ。病気になって払えなくなったらと考えてしまい不安です。もう少し負担を楽にしてほしい」
建築費用の高騰も被災者の負担を重くしています。
同市の仮設住宅で暮らす73歳の男性は、「息子がいるのでローンは組めるが、建てようと思った家は1坪当たり最低でも70万円以上かかると。震災以前はもっと安い単価で立派な家が建てられた」とため息をつきました。
地元業者の男性は、作業員不足によって、もともと安かった人件費が上昇したことが影響していると指摘します。
努力にも限界
仙台市の「荒浜移転まちづくり協議会」の木永薫会長(47)は、集団移転先でのコミュニティー維持も含め、より良い再建に向けて取り組んでいます。末永さんは、住民の努力にも限界があるといいます。
「あと一歩の支援がないと感じます。津波でなにもかも無くして、ローンを組むのもきつい。今までの災害とは規模が違います。根本的な支援の拡充は今からでもしてほしい」と語ります。
宮城県議会は今月3日、現在の国の被災者生活再建支援制度は被災者の実態に合っていない▽住宅再建支援はコミュニティーを維持するために不可欠な公共性の高い施策──などと制度の拡充・改善を求める意見書を可決しました。
東北6県の生活協同組合連合会は、加算支援金200万円を400万円に増額することなどの制度拡充を求める署名活動を100万人を目標に6月から取り組み始めました。
宮城県生協連の野崎和夫専務理事は、「今年と来年は被災者が仮設住宅を出た後の選択を決める時期です。生活再建をさらに後押しをする制度になるよう国は検討してほしい」と訴えました。
「東日本大震災復旧・復興支援みやぎ県民センター」も同署名に取り組んでいます。
被災者生活再建支援法・・1998年5月に成立。2度の改正を経て、現在は災害で被災した世帯に「基礎支援金」最大100万円(自宅が全壊した2人以上の複数世帯)と、住宅の新築購入する世帯に「加算支援金」最大200万円を支給する制度。
(「しんぶん赤旗」2014年7月28日より転載)