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財界に約束した首相 〝エネ基本計画 原発再稼働〟・・安全と国民 置き去り

左から時計回りに安倍晋三首相、経団連名誉会長の奥田碩、御手洗冨士夫両氏
左から時計回りに安倍晋三首相、経団連名誉会長の奥田碩、御手洗冨士夫両氏

「原発ゼロ」を求める世論を無視し、再稼働に突き進む安倍政権の背後には原発に固執する巨大な利権集団の姿がありました。
(佐久間亮)

自民、公明両党のワーキングチームが政府のエネルギー基本計画原案を了承した4月3日夜、安倍晋三首相は公明党衆院議員のパーティーであいさつした後、官邸から程近い紀尾井町の日本料理店「福田家」に向かいました。迎えたのは経団連の今井敬、奥田碩、御手洗冨士夫各名誉会長をはじめとした財界人。今井氏は原子力産業協会の会長でもあります。1時間半に及んだ宴席の中身は、やはり原発でした。

「川内原発の再稼働を絶対応援する」。安倍首相は居並ぶ財界人を前に政権の[決意]を示しました。原子力規制委員会が優先的に審査を進めている九州電力川内原発を突破口に、再稼働を一気に進める狙いを語ったのです。

表向きは再稼働の判断は規制委にゆだねると言いながら、財界人には再稼働推進を約束する安倍首相。再稼働が誰のためなのかは明らかです。

東電福島第1原発事故は、人類と原発が共存できないことを示しました。原発ゼロを求める圧倒的な世論は、原発に固執する民主党政権を追い詰め、「20
30年代に原発ゼロ」方針を打ち出させました。

しかし、安倍首相は就任早々、「ゼロ」方針を白紙から見直すよう指示しました。この指示のもとでつくられたのが今回の第4次基本計画です。

裏を仕切った東電出身議員

基本計画は、エネルギー政策基本法に基づいてつくられる、中長期のエネルギー政策の指針です。政策基本法は、自民党内に設置されたエネルギー総合政策小委員会(委員長・甘利明衆院議員)が中心となって02年6月に策定され、翌年10月に原発を「基幹電源」と位置付けた第1次エネルギー基本計画がつくられました。

自民党の小委で事務局長として裏を仕切ったのが、東電副社長から国政に転身した加納時男参院議員(当時)でした。加納氏は、エネルギー基本計画
の意義を、こう語っています。

「原子力をやむを得ないものと考えるか基軸エネルギーとして位置付けるのかは、原子力についての意味合いが非常に問われている今日、極めて重要で、その点、原子力を国の基軸エネルギーとして位置付けたのは初めてのことであり、大変意義深い」(『原子力eye』03年12月号)

安倍政権の基本計画は、原発を発電コストが安く安定した「重要なベースロード電源」と位置付けるなど、福島事故以前に〝先祖返り〟しています。

欧州は再生エネ「優先」・・世界に逆行する日本政府

原発を「ベースロード電源」と位置付けた今回の基本計画は、03年の計画に〝先祖返り〟しただけでなく、世界の潮流にも逆行しています。再生可能エネルギーの太陽光や風力は、原発とは対照に需要の大きな時間帯に調整用に使う「ピーク電源」の位置付けです。再生エネを原発に従属させる考え方です。

欧州連合(EU)は、再生エネの導入のために「優先給電」を指令(EUの法律)で義務付けています。「優先給電」とは、再生エネの電力は優先的に電力系統に流さなければならないというルールです。再生エネの出力が増えた場合は、原発などの出力を絞ります。日本の基本計画とは反対に、再生エネに原発を従属させる考え方です。

関西大学の安田陽准教授は、「ベースロード電源やピーク電源という分類自体がすでに前世紀的な発想になっている」と言います。

福島原発事故を受けた日本では、再生エネの抜本的普及こそ求められて
います。

安田准教授は「ベースロード電源のような発想をこれからも硬直的に続けることは、世界の潮流や新しい時代の波に乗れない足かせとなりかねない」と語ります。

安全と国民 置き去り

今回のエネルギー基本計画は、東京電力福島第1原発事故をどうみるかが問われていました。

しかし、当初案にあった「東日本大震災と東京電力福島第一原子力発電所事故は、わが国の社会に対して甚大な被害を与えた」「万が一事故が起きた場合に被害が大きくなるリスク(危険)を認識し」などの文言さえ削除されました。炉心溶融(メルトダウン)に至る重大事故(過酷事故)の危険性をいっそう軽視・過小評価することで、原発の再稼働をおしすすめようとするものです。

「リスク残る」

「原発の安全性」について述べた部分も問題だらけです。基本計画は、原子力規制委員会が定めた規制基準は「世界で最も厳しい水準」だから、「基準に適合すると認められた場合には、その判断を尊重し原子力発電所の再稼働を進める」と明記しました。

しかし、規制基準の「合格」が原発の「事故ゼロ」を保証しないことは、規制委の田中俊一委員長自身が繰り返し発言していることです。田中委員長は「(基準への適合について)安全を確認したという言い方は必ずしも正しい表現だとは思っていない」「リスクが常に残っているというのをベースにして」いると述べています。

そもそも規制基準は、汚染水問題をはじめ福島第1原発事故がいまだに収束しておらず、事故の原因究明も終わっていない段階で作られたもので、事故の教訓を踏まえたものとはなっていません。

原発で事故が起き放射性物質が放出された場合、規制基準にあるのは、屋外に放水設備を備え、放出される放射性物質に大量の水をかけて沈降させる対策であり、住民の被ばくが避けられないことが前提になっています。

しかも、米国では1979年のスリーマイル島原発事故の教訓から避難計画などを定めた防災計画が審査対象になっているのに、わが国では対象になっていません。基本計画も、「計画の充実化を支援」とあるだけで、自治体任せです。

実際、入院患者や施設入所者など要援護者の避難計画もほとんど策定されていないのが現実です。避難計画の実効性も評価しない規制基準では、「世界で最も厳しい」とは程遠く、国民の安全は置き去りです。

ウソふりまく

安倍首相は国会で「厳しい基準で、安全と認めたものは再稼働していきたい」とたびたび述べ、基準に「合格」した原発は「安全」だとウソをふりまいていることは重大です。
(三木利博)

問題増やす高温ガス炉・・米メーカー元技術者語る

次世代原発・高温ガス炉は、自民党内での議論すらないまま、与党協議の最終段階で基本計画に盛り込まれました。

高温ガス炉の実用化を目指していた米国やドイツは、すでに開発を中止しています。ドイツの技術を引き継いだ南アフリカも財政難でプロジェクトを大幅に縮小しています。

前原子力委員会委員長代理の鈴木達治郎氏は4月8日、自民党国会議員有志の勉強会で「高温ガス炉はまだ原型炉の段階。商業化の可能性は疑問符だ」と述べています。

米ゼネラル・エレクトリックの技術者だった佐藤暁氏は、高温ガス炉を従来の軽水炉より安全性が高いと宣伝することで、原発の未来を明るく描こうとしているのではないかと指摘します。実際は問題を増やすだけだと批判します。

「日本は今でも原子力分野で手を広げすぎの状態。加えて福島原発の収束・廃炉作業もある。どこも人が足りていない。高速増殖炉や再処理工場、放射性廃棄物などどうするのか。新しいことを打ち上げるより、いまある問題を片付ける議論をすべきだ」

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