原子力規制委員会の次期委員となる田中知(さとる)東京大学大学院教授か、原発の使用済み核燃料の再処理工場などを運営する日本原燃(青森県六ケ所村)と高速増殖炉の開発を手掛ける三菱FBRシステムズ(東京都渋谷区)から報酬を得ていたことが7月12日、両社への取材で分かりました。
両社は規制委の規制対象で、報酬の支払いはそれぞれ今年3月と6月まで続いていました。
日本原燃によると、田中氏は2009年5月から今年3月まで、同社の「ガラス固化技術研究評価委員会」の委員長を務め、報酬を得ていました。ガラス固化は使用済み核燃料から出る高レベル放射性廃棄物をガラスと混ぜて固め、保管しやすくする技術で、田中氏は同社に助言していたといいます。
また三菱FBR社によると、田中氏は07年7月から同社の事業に年2回ほど助言する「アドバイザリーコミッティー」の委員として謝礼を受け取っていました。今年6月、規制委員となることが決まった後に辞任しました。
規制委は内規で、審査会などに参加する専門家が過去3年間に原子力関連業者から1社当たり年50万円以上の報酬を得ていた以上、申告するよう定めています。田中氏は審査会委員ですが申告しておらず、報酬はそれぞれ50万円に満たないとみられます。両社は金額を明らかにしていません。時事通信は田中氏に取材を申し込みましたが、回笞はありませんでした。
田中氏をめぐっては、担当していた東大の講座に東京電力が約1億円を寄付したことや、原発メーカーの日立GEニュークリア・エナジーなどから寄付や研究費計860万円を受領したことが明らかになっています。
問われる適格性
原子力事業者からの報酬をめぐっては、規制委の中立性を確保するため、委員選定に当たり就任前3年間に原子力事業者の役員であったり一定額以上の報酬を得ていた者を「欠格」としたガイドラインが、2012年7月に制定されています。しかし、田中氏が日本原燃などから報酬を受け取っていたことについて、菅義偉官房長官は8日の会見で、ガイドラインは「前政権の内規と理解している」としており、委員就任は問題ないという姿勢を示しています。
田中氏は、11年度にも東京電力の関連財団から報酬を受け、原発メーカーなどから研究費の奨学寄付を受け取っていたほか、11〜12年度にかけて原発利益共同体の中核組織「日本原子力産業協会」の理事を務めており、委員としての適格性が問われています。
(秀)
(「しんぶん赤旗」2014年7月13日より転載)