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大阪ガス・LNG基地計画中止 中池見湿地全体の保全を!

ガス基地建設予定地(中池見湿地)02/4/10撮影
ガス基地建設予定地(中池見湿地)02/4/10撮影

大阪ガス(本社大阪市、野村明雄社長)は4月9日、敦賀市樫曲(中池見)に計画していた液化天然ガス(LNG)基地の建設計画を正式に中止すると発表しました。同計画(事業費約8000億円)は中池見湿地を含む105ヘクタールの敷地内に18万キロリットルのタンク10基などを建設し、パイプラインで関西圏へ供給するというもの。

予定地の中池見湿地には、絶滅危ぐ種の水生植物や昆虫などが生息し、豊富な生態系が残されていることから、地元の環境保護団体などは、計画中止と湿地の保全を求めてトラスト運動などを展開。国際的にも中池見湿地保全を求める声が高まっていました。

敦賀市内で会見した有本雄美副社長らは、「設備計画を見直した結果、計画を中止しても、現行の基地体制で安定供給が可能」と説明。2005年度末に関西電力とのLNG加工契約(約200万トン/年)が終了し、基地能力に余裕が生じることを最大の理由にあげました。

同社担当者は、「本格的に始まったエネルギー自由化のなかで、先行きの見えない事業に設備投資はできない」と、低迷する経済成長率など業界を取り巻く厳しい環境が背景にあるといいます。


1,環境保護団体が「歓迎する」と発表

また、同日「中池見湿地『ゲンゴロウの里』基金委員会」など、計画中止と湿地の保全を求めて活動してきた五団体は、「歓迎する」とのコメントを発表。

それによると「ガス基地建設の中止発表は歓迎だ。貴重な中池見湿地がラムサール条約に登録され、生態系が完全な状態で後世に伝えられるよう、行政、土地所有者の尽力を願うとともに、学者、専門家の協力を得て、湿地保全のためにいっそうの努力をしたい」とのべています。


 

2,「保全からも撤退」では、企業の社会的責任果たせぬ

中池見人と自然のふれあいの里 入口 02/4/10 撮影
中池見人と自然のふれあいの里 入口 02/4/10 撮影

大阪ガスの有本副社長は記者会見で、跡地(中池見)の保全について「関係当局と相談しながら検討する。今は白紙」とし、また保全エリアについては、「企業とすれば撤退も考えており、そうならざるを得ないと思う。他の用途を含め考えていく」とのべました。

しかし、「需要の見通しについて、1999年の延期を決定した後、数年の予測はさらに下回っている」(同副社長)とのべているように、今回の建設中止は予想していたはずです。今後の方針、説明もなく「今は白紙で協議していくが、撤退もある」ではあまりにも、企業の身勝手であり、無責任です。

河瀬市長が「今後の方針を早急に示して欲しい。計画地の適正な保全管理、保全エリアの運営管理もこれまでどおり継続するよう求めた」といいますが、当然だと思います。


 

3,東電は「尾瀬」の保全を重要課題と位置づけ 先頭に戻る

東電では、所有地を中心に、約20kmの木道を敷設、維持管理している(東電のホームページより)
東電では、所有地を中心に、約20kmの木道を敷設、維持管理している(東電のホームページより)

東京電力は有名な「尾瀬」の群馬県側の全て、尾瀬全体の約七割の土地を所有し、その保全に力を入れています。

東京電力は「地域社会と深い関わりを持つ公益事業者として、また地球社会の一員として、環境保全を経営の重要課題と位置づけ、‥‥今後も尾瀬から、自然保護にかける熱い気持ちが発信され続け、尾瀬はもちろん、日本中の美しい自然が保たれることを願っています」(ホームページより)と発表しています。

大阪ガスは、中池見全体の約八割を所有しています。東京電力が「尾瀬」の保全をしているように、大阪ガスも所有者として、環境保護に協力する立場から、行政や環境団体と協力し、湿地保全に協力すべきだと思います。

大切な中池見湿地が保全され、ラムサール条約に登録されるなら、「湿地保全の敦賀」として敦賀市のイメージも少しは良くなるのではないでしょうか。


 

4,「ゲンゴロウの里」基金委員会など5団体が4月9日に発表したコメントの全文を紹介します。(◆ゴシックの見出しは、機関紙部が付け加えました)

2002年4月9日  中池見湿地における大阪ガス LNG基地建設計画の中止について

◆建設中止を歓迎する

本日、(2002年4月9日)、大阪ガスが中池見湿地に計画していた液化天然ガス基地建設の中止を発表したことは、歓迎すべきことである。

私たちは、1990年「ナチュラリスト敦賀 緑と水の会」発足以来、中池見湿地は、市街地に隣接していながら、現存が奇跡的な絶滅危惧種の博物館であり、類を見ない多様な生態系を持つ地域であると訴えてきた。また、1996年からは、貴重な湿地を守ろうと、トラスト運動に取り組んできた。


◆いまだ全容が解明されず、国際的にも注目を浴びている

「中池見湿地トラストの地         (2002/4/10撮影)
「中池見湿地トラストの地         (2002/4/10撮影)

その間、国内外の専門家とも連携をとりつつ、調査・研究に努めてきた。その結果は、中池見温地第一次及び、第ニ次学術報告報告書として発表したが、生物の多様性は、いまだ全容が解明されないほどであり、第三次の調査を続行しているのが現状である。

また一方、指摘されていた厚い泥炭層の存在がはからずも大阪ガスの追加地盤調査結果からも判明、その有機物層(泥炭層)は、10万年分(約40m)と確認され、国際的にも注目を浴びている。

私たちは、中池見湿地全体をそのままの形で、保全したい。

また、軟弱地盤で、活断層の存在も否定できない土地であり、しかも近くに大型の活断層が集中している場所であり、危険物のLNGタンクを数多く建設することは、安全上絶対に避けてほしい、との観点から、建設に反対してきました。


◆環境省が「日本の重要湿地500」に中池見を選定。

 湿地保全のためにいっそうの努力をする。

環境省は、今秋のラムサール条約第8回締約国会議に向け策定していたわが国の重要湿地リスト「日本の重要湿地500」に中池見湿地を選定、さらに生物多様性の観点からの「生物多様性保全のための国士区分ごとの重要地域情報」の注目地域にも選定した。(2001年10月11日発表)

以上のことを勘案したとき、開発を中止したことは時代の潮流を把握した、極めて高度で賢明な判断といえる。

今後、この貴重な中池見湿地が、ラムサール条約に登録され、生態系が完全な状態で後世に伝えられるよう、行政、土地所有者の尽力をお願いするとともに、学者、専門家の協力を得て、湿地保全のためにいっそうの努力をするものである。

中池見温地トラスト「ゲンゴロウの里」基金委員会
ナチュラリスト敦賀 緑と水の会
つるが 草の根の会
中池見を伝える女たちの会
中池見 シボラの会

 

 

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