日本共産党嶺南地区委員会 > しんぶん赤旗 > 重大事故につながる火山灰・・川内原発再稼働に異議・懸念

重大事故につながる火山灰・・川内原発再稼働に異議・懸念

元京都大学助教授・火山物理学 須藤靖明さん

14-06-06karudera 東京電力福島原発事故の原因解明や収束が一向に進んでいない中、全国の「突破口」として九州電力川内原発(鹿児島県薩摩川内市)の再稼働が狙われています。有識者や周辺自治体から、過酷事故の危険性の指摘や懸念の声が高まっています。火山物理学者の須藤靖明・元京都大学助教授と、西田弘志・水俣市長に話をききました。

(中川亮)

 

 40年余、京都大学火山研究センターで、地震学を使い火山研究に携わってきました。

 川内原発では、火山活動が大きなリスクです。巨大噴火が起きた痕跡であるカルデラの数は、北海道でも多数みられますが、特別多いのが九州です。九州は長期的にマグマがたまりやすい環境にあると言えます。

 火山灰の影響は軽視できません。小・中規模の噴火によって、火山灰が原発敷地内に到達し、重大事故に至ることも否定できないからです。

 10センチ以上積もれば、原発周辺を含む広範囲で道路や電気、通信手段、水道などライフラインが失われます。原発への行き来が困難になり、事故対応もままならないでしょう。湿った火山灰が電線に積もると、漏電が起こり、発火して停電に至ります。

 乾燥した灰によって、ディーゼル発電機のフィルターが詰まります。九州電力が、桜島の噴火で原発敷地内に積もると想定している最大「15センチ」は、大変危険な数値です。灰で海水が濁り、取水口のフィルターも詰まり、取り換えは海中作業なので困難です。

 福島原発での「全電源喪失」が再び起こり、″メルトダウン″する危険があるのです。

 日本列島は偏西風の帯域に入っているため、基本的に桜島などの火山灰は川内原発と反対の東方へ飛びますが、「もしも」ということがあります。春先は東風が大きく吹き、川内に達するのは間違いありません。

 また、伊方原発(愛媛県)については、熊本県東部にある阿

蘇山で中・小規模の噴火が起きれば、火山灰で大きな影響を受

けます。

 火山活動は長期にわたり、雲仙普賢岳の噴火(1990年11月)の場合は約5年間続きました。火山灰は、少なくとも半年間、断続的に降り続けると想定するべきです。

 九州は、新しい火山が生まれる可能性が高いところでもあります。火山の誕生は小規模な噴火を伴い、原発への危険もあなどれません。

 玄海原発(佐賀県)の周辺は、その確率が非常に高い。敷地周辺で火山ができ上がってもおかしくないと思います。しかし、国や電力会社は着目すらしていません。

 仮に、阿蘇や姶良のカルデラで誕生時の巨大噴火に匹敵する「破局的噴火」が再び起きたとき、九州北部・南部一帯が壊滅的被害を受けます。それは、事前に観測して対応できるものではありません。

 阿蘇のカルデラができる数年前、西方にある、今の熊本空港のあたりで小規模の噴火が連続的に起きています。結果的に見れば、それが「前兆現象」でした。

 たとえ前兆現象をつかんでも、完全に危険を除去するための廃炉には、数十年もかかるとされています。当然間に合いません。

 川内原発を取り巻く危険の中で、大地震も怖い。

 かつて、地震が起こりにくいと思われていた九州北部でマグニチュード7級の地震(2005年3月、福岡県西方沖で発生)がありました。

 九州は、東西に地殻活動が活発な地域がある特異な場所です。東方および南方はフィリピン海プレート(岩板)が沈みこみ、西方の東シナ海には沖縄トラフ(海底の細長い谷)が存在します。

 九電は基準地震動の想定を引き上げたものの、原子炉の冷却に必要な配水管などについては、対策が非常に難しい。福島原発事故でも、地震の影響は解明されておらず、川内原発は、十分な想定や対策ができているとは思えません。

 地震の発生率の基準は、人間の都合で変えられてきたのが実情です。活断層かどうかは、もともと260万年前以降に活動したかどうかで調査されていました。そうなると、原発敷地内やその周辺の断層がほとんど「活断層」になり、原発がつくれなくなります。そのため、明確な根拠もないまま、100万年前以降、そして1桁減らして今日、12万〜13万年前以降とされました。

 九電の主張は、あくまで、原発運転期間の最大60年間に破局的噴火が起きないというだけの話であり、あまりにも無責任です。過酷事故が起きる可能性が少しでもあるなら、日本のどこにも原発を建てるべきではありません。

 

すどう・やすあき 1943年、東京都生まれ。京都大学大学院修了。理学博士。熊本県長陽村の同大付属「火山研究施設(現・火山研究センター)」で研究活動に。 1993年、助教授。定年退職後も阿蘇火山を見つめ続ける。

 

水俣病の悲劇と重なる被害・・熊本県水俣市長・西田弘志さん

 水俣病の悲劇と重なったのが東京電力福島原発の事故だと思います。

 「公害の原点」とされる水俣病は公式確認から58年を迎えましたが、いまだに解決していません。環境に配慮した都市、安心して暮らせるまちづくりと同時に、水俣病問題に向き合うことが、私たちの責任です。

 そのために、被害者団体をはじめ関係者のお話を聞き、実態を国に伝えることが必要だと考えています。熊本と鹿児島にまたがる不知火海沿岸の健康・環境調査は、被害者団体がかなり前から国に要望しており、救済につながるようであれば、必要ではないかとの思いはあります。

 原発事故による健康被害は、水俣病と規模が違いすぎるほど深刻なものだと思います。

 事故の後、避難者の多い会津若松市やいわき市などを訪れました。いわき市から原発20キロ圏の境へ向かい、どんどん上昇するガイガーカウンターの放射線数値に恐怖を感じました。そして、事故が起きればもう住めなくなるという現実を目の当たりにしました。

 国が再稼働の方向で進めている川内原発は、水俣市から最短で約40キロ先にあり、事故が起きたときの不安はあります。

 もし、川内原発で事故が起きたら、被害は避難計画の対象となる30キロ圏内にとどまるかもわかりません。一度起きたら取り返しはつかないのです。私には、市民の生命と財産を守るという大きな仕事があります。

 前市長の宮本勝彬さんが「脱原発をめざす首長会議」の結成に加わり、「原発ゼロ」を目指すまちづくりを打ち出しました。私もそれを踏襲し、「ゼロ」に向けて、太陽光発電パネル設置工事への補助金や電動自転車の普及を行い、木質バイオマス発電の実用化も進めています。

 公害は差別や偏見をもたらし、人権にかかわる問題でもあります。正しい理解が必要です。私たちの子どもの頃は、水俣病を学ぶことがほとんどありませんでした。しかし、今の子どもたちは水俣病に向き合い、しっかり勉強しています。水俣病のような被害が繰り返されないよう、これからも警告を鳴らし続けます。

にしだ・ひろし 1958年、熊本県水俣市生まれ。水俣青年会議所理事長などを経て2003年から水俣市議(3期)。 14年から水俣市長就任。

(「しんぶん赤旗」2014年6月6日より転載)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です