「家族の生活をどう取り戻すかで精いっぱい、仕事をどうするかまで、とても頭がまわりません」
豪雨水害から一週間以上がたった二十六日、福井県池田町で養殖業を営む江戸義人さん(59)は、営業再開のメドもたたないなか、自宅の後片付けなど生活再建に追われていました。
池田漁業生産組合の組合長。「池が流され、多くの魚が死んださびしさ、五十年近くやってきて開拓したお客さんにもご迷惑をかけてしまって…」
七、八月は最盛期のはずでした。豪雨の二日前から稚アユを養殖池に入れはじめたばかり。隣接する部子(へこ)川があふれ、流れこんだ土砂で、窒息死したり流されたりで魚は全滅。江戸さん自身、「あと一分遅ければ、命がなかった」といいます。
養殖池を埋めた土砂もそのまま。「自分で始末するしかないが、とても手がつきません。もし、仕事を再開しても、お客さんがついてくれるかどうか」。被害額の予想さえつかないまま、不安だけが募ります。
被災地域に差も
福井県対策本部によると、豪雨による被害は、死者三人、行方不明二人、重軽傷者十七人、住宅全壊六十九世帯、半壊百四十世帯など。二十六日午前八時現在、三市町で避難勧告が継続され、自主避難も含め百四十一人が避難生活を強いられています。
福井市中心部では、ゴミやドロの回収が進んでいますが、梅雨明け後、乾燥したドロが巻き上げられたり、床下の回収しきれなかったドロで、「においがひどくて眠れない」(春日地区、高齢の女性)といった健康面での“二次的被害”が出ています。
その一方で避難勧告が続くなか、住宅に入ったドロの除去がようやく始められた美山町など、重機の投入が必要とされている地域も残されており、被災地域差もみられます。