東京電力は5月16日、福島第1原発の港湾内と港湾外の計5カ所で、海水中の放射性物質濃度が過去最高値を更新したと明らかにしました。同原発の地下水では最近、放射性物質濃度が最高値を更新するケースが相次いでいますが、海水への影響について、東電は「原因は分からない」と話しています。
東電によると、福島第1原発港湾内の2、3号機の取水口間で12日に採取された海水で、トリチウム(3重水素)が1リットル当たり1900ベクレル検出されました。この場所での最高値は4月14日の同1400ベクレルでした。近くの別の採取ポイントでも海水にトリチウムが同1400ベクレル含まれており、これまでの最高値の同1200ベクレルを上回りました。
また、1、2号機の取水口間で15日に採取された海水からは、全ベータ(ストロンチウム90などベータ線を出す放射性物質)が同840ベクレル検出され、この場所の最高値である同540ベクレルの1・5倍超となりました。
港湾外でも、港湾のすぐ北にある採取ポイントで12日に採取した海水で、トリチウムが同8・7ベクレルと最高値を更新。南へ約3キロの地点で同日に採取した海水からもトリチウムが同4・3ベクレル検出され、これまでの最高値の2倍超となりました。
安倍晋三首相は昨年(2013年)、同原発の汚染水の影響について「港湾内で完全にブロックされている」と述べていましたが、海洋汚染は続いています。
護岸地下水3ヵ所でも
東京電力は5月16日、福島第1原発2号機の建屋東側の護岸の3カ所で採取した地下水の放射能震度が、各地点の最高値を更新したと発表しました。
東電によると15日に採取した2カ所の地下水から、それぞれ1リットル当たり3300ベクレルの全ベータ、同16ベクレルのアンチモン125を検出。12日に別の場所で採取した地下水から同1万9000ベクレルのトリチウムを検出しました。
1〜4号機の護岸の地下水では最近、その地点での放射能濃度の最高値更新が相次いでいます。今月に入って更新した場所は12地点にのぼっています。
せき汚染水 処理後散水・・東電が計画説明
東京電力は5月16日、福島第1原発の汚染水タンク群を囲うせきにたまった雨水について、仮設の浄化装置で放射性物質濃度を下げて原発敷地内に散水する計画を福島県に説明しました。
浄化後に散水するのは、暫定基準(ストロンチウム90が1リットル当たり10ベクレル未満など)を超え、専用タンクなどに移送した雨水約7600トンや、一部のせき内にたまったままの雨水。浄化後は暫定基準より厳しい基準を新たに適用した上で、散水します。
散水場所は敷地内の南側を想定していますが、具体的な場所や開始時期は未定。説明を受けた県側は、新基準の徹底などを申し入れました。
アルプス系統さらに処理停止・・残り1系統
東京電力は5月17日、福島第1原発で汚染水の放射性物質を吸着して大幅に減らす装置「ALPS」(アルプス)の1系統で白濁した水が確認され、処理を停止したと発表しました。アルプスは3系統ありますが、別の1系統(B系統)もトラブルで長期間処理ができない状態となっており、処理を継続しているのは残り1系統のみとなりました。
東電によると、17日午前、アルプスA系統の処理水が白く濁り、カルシウム濃度が16日の10倍超に上昇していることが判明。17日午前9時に、この系統での処理を停止しました。
カルシウムは汚染水の処理工程で発生しますが、濃度が上昇した原因は不明で、東電は「処理の再開時期は未定」と話しています。
今回処理を停止したA系統は3月と4月にも処理水が白濁するトラブルが発生しています。アルプスは1系統当たり日量で250トンの汚染水を処理できますが、試運転の状態が続いており、本格運転のめどは立っていません。
(「しんぶん赤旗」2014年5月18日より転載)