原発再稼働の前提になる原子力規制委員会の規制基準への適合性審査が、申請した10原発の中で「最優先」の位置づけで行われている九州電力川内原発1、2号機(鹿児島県薩摩川内市)。4月3日の規制委の現地調査でも「新たな課題はない」(島崎邦彦委員長代理)とされましたが、実際には課題は山積みです。 (柴田善太)
病院・福祉施設の避難計画策定・・3%
入院患者、高齢者など“災害弱者”である要援護者の避難計画はどうなっているのか。
避難計画策定が義務付けられる川内原発30キロ圏内の病院は87、福祉施設は153避難対象者は約1万4000人になります。しかし3月末までに計画を策定したのは1病院、6福祉施設で全体の3%にすぎません。
受け入れ先の調整は県の役割ですが、担当者は「どこの病院、福祉施設もほぼ満員で、受け入れ先を決めるのは厳しい」といいます。
川内原発30キロ圏内の9市町は避難計画を策定していますが、その内容は避難先とルートが決まっただけというのが現状です。出水市の担当者は「渋滞予測は県が取り組む。要援護者の避難も含め市だけで具体化できることは少ない」と当惑ぎみです。
周辺に火山多数でも対策は・・白紙
周辺に桜島、薩摩硫黄島、雲仙岳、阿蘇山、新燃岳など活動性の高い火山があるのが、川内原発の特徴です。
規制委の規制基準(2013年7月施行)で新たに火山対策が盛り込まれましたが、「監視」どまりで具体的対応は地震、津波対策と比べても不鮮明です。
3月の審査会合で九電は、3万年前の姶良カルデラの噴火で火砕流が原発敷地内に到達した可能性を初めて認めました。
九電は、対策としてマグマだまりの兆候が見られた段階で原子炉を停止することを規制委側と合意しましたが、燃料の取り出しなど停止後の対策と手順は審査されず、ほぼ白紙の状態です。
「地元が理解」というが住民は 「地元が理解」というが自由民は・・反対
川内原発が優先審査に選ばれた要因として「地元の理解が進んでいる」という指摘がありますが、進んでいるのは「立地首長の理解」で、住民の理解ではありません。
川内原発建設反対連絡協議会の島原良子会長のもとには「優先審査が決まって、薩摩川内で同居する予定だった息子が帰らないといっている」「表には出られないが再稼働反対のために何かしたい」という声が寄せられています。住民団体が薩摩川内市で昨年(2013年)行ったシール投票では111人が投票。再稼働反対が50%、賛成は18%でした。
再稼働に前のめりの伊藤祐一郎知事は住民への再稼働問題での説明会を薩摩川内市で2回、いちき串木野市で1回にし、人数も限定する方針。これには鹿児島市長や日置市長、阿久根市議会が地元開催の要望を提出。30キロ圏外の垂水市議会は再稼働について「被害自治体になる恐れのある住民、自治体の同意を得る」ことを求めた決議を可決しています。
避難計画除外は人命軽視・・薩摩川内市で自治会役員を務める九州電力OBの話
規制委の規制基準が避難計画を対象にしていないのはおかしい。避難は放射能の拡散から始まり、対応には専門知識、技術的能力が求められます。しかし、国も規制委も自治体と住民に丸投げで、避難計画を審査・評価しないというのは人命軽視です。
鹿児島県は住民の声をしっかり聞くために、県民全体を対象にした説明会を開くべきです。今までの住民説明会は行政と電力で調整し、原発推進派ばかりに発言させていました。この体質を改めることは、説明会の前提になります。
私自身、福島第1原発事故で原発の危険性を痛感しました.原原からの脱却に向かう時でしょう。
再稼働阻止へ力尽くす・・まつざき真琴・日本共産党県議の話
伊藤知事は原発立地13道県の中で唯一、審査も終わっていないのに、川内原発説明会の予算を2014年度予算に盛り込みました。
福島の事故で原発の危険性が明らかです。しかも、川内原発の避難計画は形だけで住民の安全を確保できるものではありません。
県議会で知事に、「こんな避難計画で再稼働を認めるなら人命軽視だ。事故が起こらないと考えているなら安全神話だ」と追及すると知事はまともに答えられないのです。
知事は再稼働賛成でも、県民は賛成ではありません。今後も世論を盛り上げ、議会でも再稼働阻止めために力を尽くします。