原発を長年運転していると、原子炉圧力容器などの金属部分に中性子が当たり、脆(もろ)くなります。特に加圧水型原発(PWR)の圧力容器は炉心から近く、脆くなる温度=脆性(ぜいせい)遷移温度が著しく上昇し、脆い温度領域が広がります。
もし、こうして広がった脆い領域で、事故などによる熱衝撃が加わると、圧力容器が簡単に壊れてしまい、福島事故を上回る過酷事故へと進展します。
脆性遷移温度の上昇のしかたは、圧力容器を製造した時の材質に含まれる不純物に依存するので、原子炉圧力容器の内部に製造時の素材のサンプル(試験片)の板をぶら下げて、これを時々取り出して遷移温度を測定する方法が取られてきました。
ところが、当初40年程度の使用しか想定していなかったので、試験片が足りなくなり、これをカバーするために、中性子をよけいに当てたデータ(加速照射監視試験データ)を用いたり、かつて限界として設定した最高温度を使うことをやめたり、焼きなました試験片を使ったりと、非科学的な措置が取られたため、現在ではこれらのデータは全く信用がおけません。
こうした物理的な劣化のほかに、古い原発には「設計の古さ」という問題もあります。こうした古い設計の原発には「何が起こるかわからない」という本質的な欠陥があります。
上述したような本質的な老朽化問題は、今回の法律に盛り込まれた長期施設管理計画などでカバーできるものでないことは明らかです。
(「しんぶん赤旗」2025年7月5日より転載)