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元作業員、東電など提訴・・福島第1原発で「無用な被ばく」/福島地裁支部

被ばく問題で東電らを提訴、記者会見する元作業員(左から3人目)と弁護団=5月7日、司法記者クラブ
被ばく問題で東電らを提訴、記者会見する元作業員(左から3人目)と弁護団=5月7日、司法記者クラブ

 東京電力福島第1原子力発電所事故の緊急作業に従事、国が示す年間被ばく線量の上限20ミリシーベルトを上回る20・49ミリシーベルトの被ばくを余儀なくされたのは安全配慮義務違反があったためだとして元作業員が7日、東電などに1100万円の損害賠償を求め、福島地裁いわき支部に提訴しました。

 緊急作業での安全配慮義務違反で東電を提訴するのは初めて。訴えたのは福島県内の2次下請け会社の元作業員の男性(48)で、2011年3月24日に3号機タービン建屋地下での電源盤へのケーブル接続作業などにあたりました。

 訴状によれば、ケーブル接続作業での被ばくは、原子炉の炉心溶融(メルトダウン)などで必然的に作業員が被ばくをするという危険な状況が作り出されたことが原因と強調。1号機の地下建屋にも高線量の放射性物質の汚染水がたまっていた事実を確認しながら東電はその情報を秘匿したと指摘。作業当日に現場の汚染水の事前確認、空間線量の測定を怠り、線量計の警報音を無視して作業の継続を命令するなどの不適切な対応で原告は無用な被ばくをさせられたもので、被告東電らは安全配慮義務違反に基づく損害賠償義務を負うと主張しています。

 元作業員が訴えたのは東電と、同社から緊急作業を受注した元請けの関電工、その1次下請けの恒栄電設の3社。

会社は知りつつ作業させた・・元作業員憤り

 「被ばくによる将来不安がある。提訴をきっかけに、働きやすい環境になればと思う」。東京電力福島第1原子力発電所事故の緊急作業に動員させられた元作業員の男性(48)が5日7日、提訴後の記者会見で語った言葉です。東電や元請け会社の作業員の被ばくへの無関心に近い軽視と使い捨て体質への憤りをこめた告発でした。

 弁護団とともに会見した原告の男性は、この3年間、抱え続けた被ばくへの恐怖、年間被ばく限度、20ミリシーベルトを超えたとして福島原発をはずされたことによる収入低下による暮らしへの不安定感など、淡々とした口調ながら悔しさをにじませました。

 「関電工は汚染水の中に入って作業をすればどうなるのかわかっていてやった。わずか1時間程度の作業で20ミリシーベルトを超えることは、原発事故前の年間で最大3ミリシーベルト、通常なら1ミリシーベルトから2ミリシーベルトたったことと比べれば大量被ばくになる」

 弁護団も「原発での労災は5ミリシーベルトの被ばくで認定されている。当日、別のチームが線量を計測して400ミリシーベルトを検出、直ちに撤退した。原告のチームも事前に計測して作業はやめ、立ち入らなければ原告を含め誰も無用な被ばくはなかった」と、東電や元請けの責任を厳しく指摘しました。

無視された警報音

 元作業員の男性は2012年11月、「死と隣り合わせの原発に送り込まれ、ずさんな放射線管理で浴びてはならない放射線被ばくを強いられた」として労働基準監督署に労働安全衛生法違反の罪で元請けの関電工を刑事告発しました。

 しかし、福島地検は今年1月、関電工を不起訴としました。弁護団によると検察は、緊急作業時の被ばく限度の線量が250ミリシーベルトで、男性の被ばくは限度未満で作業内容に違反は認められないと判断したとされています。

 これに対し訴状の立場は明確です。労働安全衛生法22条、電離放射線障害防止規則(電離則)が事業者に対し放射線による健康被害を防止する必要な措置を講ずることを義務付けていること。電離則42条は「事業者は、次の各号のいずれかに該当する事故が発生したときは、その事故によって受ける実効線量が15ミリシーベルトを超えるおそれのある区域から、直ちに、労働者を退避させなければならない」とし、同条3号は「放射性物質が多量にもれ、こぼれ、又は逸散した場合」と定めています。

 今回のケーブル接続作業では現場の線量測定をせず、別の東電柏崎刈羽原発の作業チームが空間線量を計測した結果、400ミリシーベルトを検出、同千-ムは即時撤退したにもかかわらず、関電工チームは20ミリシーベルトに設定した線量計の鳴り響く警報音を無視、「誤作動だ」と作業の継続を命令したのです。

司法の判断が問われています。

(山本員直)

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