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夫自殺は原発への抗議・・福島 東電と和解の農家遺族語る

東京電力福島原発事故を苦に自殺した福島県須賀川市のキャベツ農家、樽川(たるかわ)久志さん(当時64)。今までマスコミの前に姿を見せなかった妻の美津代さん(63)は、「抗議の自殺です。原発をなくしてくれと言いたくて、夫は死んだんだ」と静かに語りました。
(福島県・野崎勇雄)

東電は謝罪をと語る(右から)遺族の美津代さんと和也さん。左端は日本共産党の丸本由美子市議=6月10日、福島県須賀川市
東電は謝罪をと語る(右から)遺族の美津代さんと和也さん。左端は日本共産党の丸本由美子市議=6月10日、福島県須賀川市

遺族は、裁判外紛争解決手続き(ADR)を申し立てていましたが、今月上旬、東電との和解に応じました。原発事故による自殺について東電が責任を認めた初めての事例ですが、東電は今までのところ謝罪については拒否しています。

和解した日、美津代さんは、仏前で手を合わせながら「なんとか一歩前に進んだよ。まだ敵(かたき)を取ったとは言えないけど」と語りかけました。

2年3カ月前の東日本大震災の翌日、東電福島第1原発1号機が爆発。TV放映で知った久志さんは美津代さんと後継ぎの二男・和也さん(37)に、「おれが言ったとおりになったろう。福島の農業は終わりだ」と叫ぶように語りました。

久志さんは、キャベツなど野菜類の出荷制限が指示された翌日の3月24日、自殺しました。

19歳で結婚した美津代さんは振り返って言います。「田んぼ3町歩と畑をつくっていました。夫は、さらに小麦の栽培、菜種油づくり、学校給食用の野菜出荷などいろんなことをやってきました。勉強熱心でしたよ。原発事故がなければ土いじりしてゆっくりできたろうに」

和也さんは農業を手伝い始め、会社勤めもやめました。「親父も大変そうだったし、自分自身が農業を好きだった。6年間いっしょにやり、きびしい人だったけど、尊敬していました。10年、15年やれば農業も良くなるといっていた親父が、原発事故のときは『間違った道を勧めてしまった』と悔やんでいたのが思い出される」と唇をかみしめます。

周囲から裁判はやらない方がいいと止められましたが、「東電に、『原発事故で死んだ者はいない』と言わせたくなかった」と和也さん。

美津代さんも「東電の社員が『会社として香典はあげません。個人として出します』と言うんです。原発事故関連で自殺した人すべてに謝罪してほしい」といいます。

美津代さんは「夫が死んだ一番の元は土を汚されたこと。もう百姓はできないというのが一番です。息子も農業に自信がついてきたようなので、現実と向き合い、安全安心な農産物を作ろうと話しているところです。夫の死を無駄にしないため、少なくとも原発反対だけは言い続けていかないと」と語りました。

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