東京電力は2日の取締役会で、柏崎刈羽原発(新潟県柏崎市、刈羽村)6、7号機について再稼働の前提となる安全審査を原子力規制委員会へ申請することを決め、広瀬直己社長が同日発表しました。規制委の新規制基準が8日に施行されるのを受け、収益改善のために速やかに申請書を提出するとしています。
柏崎刈羽原発6、7号機は出力がともに135万6000キロワットの国内有数の大型原発です。新規制基準が求めている過酷事故対策は完了しておらず、直下に断層の存在も確認されています。しかも、福島第1原発事故の原因は未解明で、同原発が増え続ける汚染水の問題など危機的状況にある中での決定には、国民の安全を置き去りに経営を優先するものとの批判があがっています。
東電がこのようななかで、柏崎刈羽原発の安全審査の申請を決めたことは、「安全神話」にどっぷり漬かって地震・津波対策を怠った結果、世界でも例をみない原発事故を引き起こした東電の体質が全く変わっていないことを示すものです。
新潟県の泉田裕彦知事は、新規制基準が決定された6月19日に、「この基準は安全性を保証するものではないと認識している」とのコメントを発表。柏崎刈羽原発の再稼働に慎重な姿勢を示しています。東電は広瀬社長が新潟県を訪問し、泉田知事らに説明するとしていますが、同知事は東電が再稼働方針を発表した後、「地元との信頼関係を完全に破壊する行為だ」と述べました。
安倍自公政権は、新規制基準をてこに原発の再稼働をしゃにむに推し進めようとしています。東電が、いまだに十数万の人たちが避難生活をしなければならない深刻な福島第1原発事故の当事者でありながら、原発の再稼働に名乗りを上げられるのは、自公政権のこうした原発推進の姿勢があるからです。
新規制基準が施行される8日には、北海道、関西、四国、九州の4電力が計6原発の安全審査を申請する見込みで、原発事故の危険性はいっそう高まります。
解説・・事故の究明・収束ないまま
東京電力が再稼働の前提となる安全審査を申請する方針を決めた柏崎刈羽原発に7基ある原子炉は、6、7号機を含め、すべて、福島第1原発の6基と同じ「沸騰水型」です。出力は福島第1原発の6基が46万~110万キロワットだったのに対し、柏崎刈羽原発は110万~135万6000キロワットと大型で、合わせて821万2000キロワットは世界最大です。
新基準では、福島第1原発事故のような炉心溶融(メルトダウン)が起きても、原子炉格納容器内の圧力が高くなって壊れるのを防ぐために内部の水蒸気などを放出する際、含まれている放射性物質を除去する「フィルター付きベント(排気)」装置の設置を義務付けています。
福島第1原発事故では格納容器が壊れ、大量の放射性物質が大気中に放出されましたが、どこがどのようにして壊れたかもわかっていません。フィルター付きベントがあっても、大量の放射性物質の放出を防げる保証はありません。柏崎刈羽原発では、そのフィルター付きベントすらできていません。
柏崎刈羽原発は、2007年の新潟県中越沖地震で大きな被害を受けたことからも明らかなように、地震の危険地帯に立地しています。福島第1原発事故の後、東電が行った調査でも柏崎刈羽原発の直下に24万~20万年前に活動した断層や三十数万年前に活動した断層があることが明らかになっています。政府の地震調査研究推進本部は40万年前以降に活動した断層を活断層とみなしています。新基準では、「後期更新世(13万~12万年前)」以降に活動していなければ活断層と認定しないとしているものの、その間の活動が明らかでなければ40万年前までさかのぼって調査するよう求めています。直下の断層が活動して地震を起こす危険性は否定できません。(間宮利夫)
東電、原発扱う資格な・・
持田繁義・原発問題を考える柏崎刈羽地域連絡センター会長、党柏崎市議の話
柏崎刈羽原発の再稼働などとんでもない話です。そもそも東京電力には、原発を扱う資格はありません。原子力基本法には「自主・民主・公開」が定められています。現在、企業のコンプライアンス(法令遵守)が言われていますが、東電が法令違反の経営を続けてきたことが、福島第1原発での過酷事故を生じさせたと思います。
何よりも問題なのは、東電が住民たちの意見を聞こうとしないことです。私たちは何度も津波や過酷事故の危険を指摘し、それへの備えを求めても、国とともにそのようなことは起きるとは考えられないといって、対策を怠ってきたのです。
しかも福島事故の検証、原因究明すらできないでいます。このような状況のまま新しい規制基準ができたからといって、被災原発でもある柏崎刈羽原発の再稼働準備だというのは、根本的な反省なし、営業優先、国民の命を軽んじているといわざるを得ず、柏崎刈羽原発の再稼働など言語道断です。