解説・・ 東京電力福島第1原発(福島県大熊町、双葉町)の海に近い観測井戸の地下水から放射性物質のセシウム134とセシウム137が高濃度で検出されたことは、東電が汚染水の流出防止対策に真剣に取り組んでこなかった問題をあらためて浮き彫りにしています。
東電が、地下水から放射性物質のストロンチウム90とトリチウム(3重水素)が国の法令限度を大きく上回る高濃度で検出されたことを初めて明らかにしたのは6月19日でした。その後、地下水と周辺で採取した海水からもきわめて高い濃度のトリチウムが検出されました。
このことについて、東電は福島第1原発事故から1カ月もたたない一昨年(2011年)4月にタービン建屋の地下などにたまっている高濃度放射能汚染水が海へ流出した際の残りが地中に存在し、地下水に拡散したと推定しています。
海へ流出した高濃度放射能汚染水には、その時点でセシウム134、セシウム137とも1リットル当たり18億ベクレル合まれていました。それぞれの半減期約2年と約30年を考慮しても、東電の推定どおりなら、いまでも大量のセシウム134とセシウム137が海に近い場所に残っていることになります。
今回、地下水からセシウム134とセシウム137が高濃度で検出されたことは、一昨年4月だけではなく、高濃度放射能汚染水の新たな流出の可能性も示唆しています。タービン建屋から海へ向かって地下のトンネルが延びており、そこには高濃度放射能汚染水がたまっているとみられているからです。
東電は、ようやく護岸の地盤改良工事を始めましたが、海への流出がこれ以上起きないよう万全の対策をとるべきです。
(間宮利夫)