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ヒ素、環境基準の125倍検出で、「市民の会」が敦賀市に申し入れ

市に申し入れを行う「市民の会」メンバ(2001/9/20・敦賀市役所)
市に申し入れを行う「市民の会」メンバ(2001/9/20・敦賀市役所)

「自然と環境を守る敦賀市民の会」は、木の芽川で基準の125倍のヒ素が検出された問題で、十九日に記者発表、二十日には敦賀市に「住民の安全を守る施策を実施するよう」申し入れました。この申し入れには、敦賀市の共産党議員団の河内猛、上原修一、大西通代、山本きよこの各議員も出席しました。

◆特に汚染がひどいヒ素について。

◆観測井戸の塩素イオン濃度の悪化について。

◆キンキクリーンセンタ(株)の放流先ピットの堆積泥の中から、140pg-TEQ/gのダイオキシン類が検出。

◆「県検討委員会」のえん提の安全確認について。

◆大規模地震動を想定したえん提の安全確認について。

◆記者発表の全文


◆申し入れ全文

2001年 9月 20日

福井県敦賀市鉄輪町2-2-26
自然と環境を守る敦賀市民の会
会長 山田礼次郎

 敦賀市長 河瀬一治 殿

樫曲の一般・産業廃棄物最終処分場について、
住民の安全を守る施策を実施するよう求める申入書

 敦賀市としても、「水環境調査」など木の芽川の安全確保のため奮闘されていることに敬意を表します。

さて、私たち「自然と環境を守る敦賀市民の会」は7月4日、木の芽川の河川水、低質(川の泥)、魚類について、処分場真下、上流、下流の計6地点で採取し、神戸大学と福井大学の先生に分析依頼をしました。

その結果、処分場の真下で採取した河川水から環境基準の125倍にあたる1.25�/lのヒ素(環境基準0.01�/l)が検出されたのをはじめ、下流域の三和橋付近で0.171�/lなど高濃度のヒ素を検出しました。

また、6地点の低質からもヒ素を検出。他に検出された13種類の重金属類などのデータを分析した結果、処分場から有害金属類が木の芽川に流出し、下流の流れの緩やかなところに堆積しているのではないかと推測されます。

よって、市民の命の水を守る立場から、次のことを申し入れます。

  1. 特に汚染がひどいヒ素について。  河川水のヒ素は、私たちが作成した資料が示すように、処分場真下の付近では環境基準の125倍(1.25�/l)という値になっている。その下流では10倍~17倍(0.106~0.171�/l)の値になっている。
    低質のヒ素についても、処分場真下で0.107�/g。その下流の流れの強い場所では、0.0107�/gと10%に下がるものの、流れが緩くなる三和橋付近ではそれぞれ0.0670�/g(63%)、0.0986�/g(92%)となっており、処分場から出たヒ素が、三和橋付近に堆積される傾向があると見られる。
    これらの傾向は、他に鉄(Fe)、マンガン(Mn)、リン(P)、バナジウム(V)でも見られることから、処分場から流れ出た金属類が、木の芽川に流れ込み、流れの遅い場所に堆積されるのではないかと推測される。
    敦賀市が木の芽川で実施している水質調査では、ヒ素は測定器の検出限界である0.005�/l以下となっており、大きな差があります。
    以上の結果から、木の芽川の河川水、木の芽川に流入する水、地下水、低質、周辺土壌、および棲息する動植物などについて系統的で、これまで以上に綿密で広範囲な調査と、結果についての原因究明を行う必要があります。
    よって、福井県に対して詳細な調査を求めるとともに、県が実施しないとき、または、調査内容が不十分なときは敦賀市として実施すること。
  2. 敦賀市の観測井戸5~10の塩素イオン濃度を、県「検討委員会」の資料より見ると1999年3月では約20�/lであったものが、徐々に上昇し昨年の10月では約40~50�/lに悪化しています。
    これは、処分場のある木の芽川水系だけに見られる現象で、有機系の汚染が進んでいることを示しています
    よって、福井県に対して詳細な調査を求めるとともに、県が実施しないとき、または、調査内容が不十分なときは敦賀市として実施すること。
  3. 県「検討委員会」の資料によれば、キンキクリーンセンタ(株)の放流先ピットの堆積泥の中から、140pg-TEQ/gのダイオキシン類が検出されています。
    処分場周辺の土壌の綿密で広範囲な調査と、結果についての原因究明を行う必要があります
    よって、福井県に対して詳細な調査を求めるとともに、県が実施しないときまたは、不十分なときは敦賀市として実施すること。
  4. 県は、えん提と斜水シートの「安定解析」のため「滞留水位と土質定数およびそれらの分布状態を把握する必要があるため、機械ボーリングを基本とした調査を行う」ことが必要だといいます。しかし、ボーリング調査(5本)は、地面の中に細いパイプを打ち込みその中から地盤の資料を採取するとともにその堅さを測定するものです。また浅層反射法探査(280m)とPS検層(50m・ボーリング孔利用)は、自然に出来た地層の調査をするもので、これらは埋立地の調査には向かないといいます。ましてや燃え穀や自動車を切断したシュレッダー屑など雑多な大量のゴミと僅かの土砂をサンドイッチ状に埋立てたところでそのような調査をやっても、安定性を見る上で意味のある結果は得られないと考えます。
    よって、県に処分場の一部の廃棄物層を切断し、中の状態を直接見るトレンチ調査や効果的なトレーサー試験を行うなど、綿密な調査を実施するよう求めるとともに、県が実施しないときまたは、不十分なときは敦賀市として実施すること。
  5. 敦賀市「プロジェクトチーム」の指摘でもあるように、処分場えん提やえん提下部のよう壁について、「道路土工─のり面工・斜面安定工指針」、「道路土工─擁壁工指針」にもとづけば、「大規模地震動を想定した対策」が必要です。えん堤の安全性、埋立てられた廃棄物の安定性について、大規模地震時をも十分考慮し、疑問の余地なく明かにするよう県に求めるとともに、県が実施しないときまたは、不十分なときは敦賀市として実施すること。

以上


◆記者発表の全文

2001年 9月 20日

自然と環境を守る敦賀市民の会

木の芽川・河川水と低質(泥)および棲息する魚類中の(有害)重金属類の調査を行った結果について。

私たち「自然と環境を守る敦賀市民の会」は、幾度となく福井県に河川の調査を依頼してきましたが、河川水の調査のみで、県は「環境基準以下で問題なし」と言ってきました。

処分場真下の北陸トンネル内の汚水を見ても、処分場直下の木の芽川護岸からの悪臭を放つ汚水を見ても、「因果関係ないし」と言い続けてきました。

今回、木原敏先生の助言をいただき、自前で木の芽川の汚染状況を調査することとになり、河川組合の協力を得て採取した検体を、神戸大学工学部情報知能工学科の後藤隆雄先生、および福井大学の先生に分析をお願いしてきました。

その結果が出ましたので、ご報告いたします。

1、河川水、低質の採取場所について。
��・・・・木の芽川処分場上流。流れの遅い場所。(獺谷橋の少し上流)=それぞれ1検体
��・・・・処分場真下。処分場側の流れの遅い場所。(旧採石場の橋)=それぞれ1検体
��・・・・樫曲付近。流れの遅い場所。(マルトミ工業洗車場うら)=それぞれ1検体
��・・・・三和橋の下、東側。流れの遅い場所。=それぞれ1検体
��・・・・三和橋の下、西側。流れの遅い場所。=それぞれ1検体
��・・・・北陸トンネル湧水出口付近。流れの遅い場所。(三和橋の下から十数メートル下流の東側)=それぞれ1検体
※検体=◆河川水:地点は別紙。約1.5リットルを岸から約50�の場所で採取。
◆低質:地点は別紙。流れの停滞した部分に堆積したもの。◆採取日は2001年7月4日
◆採取者は木子正勝、山本雅彦、木原敏

2、魚類の捕獲場所
��・・・・木の芽川処分場上流。(獺谷橋の少し上流)
あゆ6匹・・・・河川組合提供
��・・・・処分場真下(旧採石場の橋)から㈱マルトミ工業事務所の間
うぐい2匹、おい川6匹
��・・・・三和橋の真下から数十メートル下流。
あゆ5匹、うぐい2匹、おい川3匹
※測定法は1、2ともに環境基本法に基づくフレーム原子吸光法=「日本工業規格K0102」に定める方法。低質は、溶出試験でなく直接分析(フレーム原子吸光)

3、検査結果

  1. 後藤隆雄先生の見解  分析結果の一覧表とグラフからお分かりのように、発生源下(処分場下流)の汚泥はひどいようで、土壌だけでなく、水溶液(河川水)もひどいようでした。
    �、ヒ素濃度、鉄濃度が高く、EC(電気伝導度)も高く、PH(水素イオン濃度)が酸性側などから、有機系の汚染が考えられる。
    �EC(電気伝導度)��~��の流れのように、汚染の影響は鮮明である。
    (河川水の電気伝導度が、処分場を堺にしてオーダーが変わるくらい変化する)
  2. 特に汚染がひどいヒ素について。
    河川水中の砒(ヒ)素(AS)は、私たちが作成した資料が示すように、処分場真下の付近では環境基準*(0.01�/l)の125(1.25�/l)という値になっている。その下流では10倍~17倍(0.106~0.171�/l)の値になっている。
    ※環境基準=「人の健康の保護に関する環境基準」(環境基本法)
  3. 土壌中*(低質*)の砒素についても、��処分場真下で0.107�/gという値になっている。その下流の流れの強い場所では、0.0107�/g(10%)に下がるものの、流れが緩くなる三和橋付近��、��ではそれぞれ0.0670�/g(63%)、0.0986�/g(92%)となっており、��処分場から出た砒素が、三和橋付近��、��に堆積される傾向があると見られる。
    これらの傾向は、他に鉄(Fe)、マンガン(Mn)、リン(P)、バナジウム(V)でも見られることから、処分場から流れ出た金属類が、木の芽川に流れ込み、流れの遅い場所に堆積されるのではないかと推測される。
    ※低質=今回の測定方法は、川の泥(低質)の中にどれだけの金属類が含まれているを直接分析したもので、�/gで表す。この方法での環境基準はない。(環境省で検討中)
    ※土壌の環境基準=「土壌の汚染に係る環境基準」(環境基本法)では、環境基準(0.01�/l)があるが、測定方法は溶出試験*のみで今回のデータと比較するのは難しい。
    ※溶出試験=水を加え、水に溶け出た金属のみを分析する方法で、K0102付表による。
  4. 魚類中の金属類の調査結果に付いて。
    今回、カドミウムと銅のデータしか数字が出ていない。フレーム原子吸光法*で検査したのであれば他の元素について測定可能であるが、データが示されていないので総合的に判断するのは難しい。
    特に魚類については、検体をまるごとすりつぶして検査していることから、検体のエラ、肝臓、骨に濃縮すると見られる重金属が希釈された可能性がある。また、重金属が焼却によって気化し、サンプルから抜け出てしまった可能性もある。
    以上のことから、今回のデータで汚染の有無を判断するのは難しい。 しかし、樫曲の土壌(河川の低質)に0.00068�/lのカドミウムが検出(溶出試験で)されたことは、植物性プランクトンなどによって生物濃縮があるのではないかと推測できる。
    ※フレーム原子吸光法=「日本工業規格K0102」に定める方法。
    ※土壌中のカドミウムの環境基準=0.01�/l(環境基本法)

4、今後の対策

以上の結果から、木の芽川の低質、周辺土壌、河川水、木の芽川に流入する水および汚泥、地下水などについて系統的で、これまで以上に綿密で広範囲な調査と、結果についての原因究明を行う必要がある。

◆(参考)ひ‐そ【砒素・ヒ素】 (arsenic) 窒素族元素の一。元素記号 As  原子番号33。原子量74.92。灰色砒素・黄色砒素・黒色砒素という3種の同素体がある。単体も化合物も猛毒。化合物半導体の成分として用いる。

以上

 

 

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